心理職でもできる資産形成と運用

心理職でもできる資産形成と運用

FP×心理Thによる資産にまつわるアレコレのお話

サイコパスの真実

 

どの社会にもサイコパスと呼ばれる人が一定数います。厄介な人たちではありますが、人間の進化論の観点から考えたとき、彼らは何らかの役割があるのかも知れません

 

これまで犯罪者や司法領域での臨床に関わる機会がなく、サイコパスについてきちんと学んだことがなかったので、手に取ってみました。

 

本書によれば、

これまでのサイコパスに関する書籍は、難解な専門書か、逆に噛み砕きすぎて、ともすれば興味本位のような概説書がほとんどで、科学的知見に基づきながらも専門用語を排して書かれて信頼の置ける書籍は、残念ながらあまり見当たらない

P013

とのことで、この点を注意して本書は執筆されたらしいのですが、まさに本書は難解ではないものの、極めて厳格に記述された書籍となっていました。


サイコパスの類型に関しては様々な説があるらしいのですがが、その中でも本書が最も記述に紙面を割いていたのは、ロバート・ヘアのサイコパス・チェックリストでした。
このチェックリストによると、サイコパス

①対人因子(表面的な魅力、他者操作性、病的な嘘言癖、など)、
②感情因子(良心の欠如、共感性の欠如、浅薄な情緒性、不安の欠如など)、
生活様式因子(現実的かつ長期的目標の欠如、衝動性、刺激希求性、無責任性、など)、
④反社会性因子(少年非行、犯罪の多方向性、など)

といった四つの因子から構成されるパーソナリティの障害なのだそうです。この四つの因子の強弱によって症候群的な色彩を帯びるのです。


サイコパスと言うと、すぐに連想するのは④の反社会性因子と、②の感情因子に含まれる良心の欠如ではないでしょうか?


ですが、この理解は正しくないようです。

ハーベイ・クリックリーによれば、サイコパスに共通する中心的特徴は、上記チェックリスト②に含まれる「不安の欠如」とのことのようです。

 

不安が欠如しているため、外部からの刺激に対して、不安や恐怖心という感情的ブレーキを欠いています。

倫理や共感性による歯止めもなく、ひたすら自らの欲求充足のために他人を搾取するのがサイコパスの特徴です。

 

サイコパスから④の反社会性因子を連想しやすいことから、サイコパス=反社会性パーソナリティ障害と思っている人も多いかと思いますが、この理解も正しくはありません。

本書には、反社会性パーソナリティ障害との異同が述べられていました。
簡単にまとめると、反社会性パーソナリティとは③④重なるところがありますが、①②は少ししか重なりません。


ちなみに、自己愛性パーソナリティ障害とは①が類似し、②の一部が重なる、ということでした。


本書では、サイコパスの治療についても述べられていました。

 

かなり衝撃的な事実だったのですが、なんと、サイコパスではない犯罪者に用いる矯正的な治療は非常によい効果を上げている一方、同じ治療がサイコパスには逆効果になるのだそうです!


なんでも、治療を通して他者への配慮、共感性、感情理解、社会的スキルなどを学ぶのですが、サイコパスはこれを悪用し、次の犯罪に役立てるのだそうです。他人の心を読んだり、他人を操ったりする能力に磨きがかかった、ということらしいです。。。

 

何とも恐ろしい。
サイコパス傾向がある人たちに特化した治療の必要性を明確に物語っているデータでだと思います。


ともかく、サイコパスについて学術的に学びたいと思う初学者の方や、今後サイコパスの治療に関わる予定の方には、本書はまさに適切なものとなっていると思われます。

興味のある方には強くお勧めしたいです。



ただし、特に本書の前半には犯罪者の心理についての生々しい記述があるので、心臓の弱い方は覚悟して読むことが必要かも知れませんのでご注意ください!

編集後記出来れば人のことを悪く捉えたくないのが心情と言うものでしょう。ですから、多少相手のしたことに違和感があっても、それを否認してしまうことがしばしばだと思います。

ところが、意外にもサイコパスの特徴を持っている人はすぐ身近にいるのです。
相手の言動に違和感を感じたとき、大切にされていないように感じるとき、普通躊躇するようなことを平気で相手がするとき、その相手はサイコパスなのかもしれません。
相手が本当にサイコパスだった場合、深くつきあえばつきあうほど、こちらの被害も大きくなり、また離れるのが難しくなってしまいます。
まずはしっかりとサイコパスについて知り、少しでも「おかしいなこの人」と思ったら、距離をすぐにとることが大切ですね。