心理職にとって行動経済学を学ばないことは大きな機会損失である
リヒト(@r2209)です。 臨床心理士・公認心理師を生業としながら、FP2級を取り、心理職のお金廻りのことを考えています。
今日は、心理職にとって行動経済学を学ばないことは大きな機会損失であるというテーマでお話しさせていただきたいと思います。
マーケティングの4P
以前の記事でも書きましたが、
僕には「心理学は他の専門性のバックアップが得意な学問であり、心理職もそれに習って他の専門家をバックアップすることも考えて行く必要がある」
という持論があります。
このように考えるに至ったのはいくつかの経緯があるのですが、本日はその一つの具体例について紹介していきたいと思います。
実は僕、ある団体のイベントのミーティングにちょくちょく参加させもらって、そこで色々とアイデアを出させて頂いているんですね。
そこではいわゆる4Pにまつわるお話しもさせて頂いています。
4Pというのはマーケティング用語で、Product(プロダクト:製品)、Price(プライス:価格)、Place(プレイス:流通)、Promotion(プロモーション:販売促進)の頭文字をとったものです。
基本的にマーケティングというのは、まず自社の強み弱みをSWOT分析などで把握して、STP分析などで戦場を決めます※。
(※僕が学んだことのアウトプットを兼ねて、いずれこのあたりの心理職にも使えそうなマーケティング理論についてもお話ししていくつもりです!)
そして、そのうえで、4Pを使って「どんな製品を、いくらで、どういう経路で売り出すのか」、そして「どのように製品を届けていくのか」という戦略を検討します。
僕がミーティング内でお伝えするのは上記4Pの内、主にPrice(プライス:価格)やPromotion(プロモーション:販売促進)の部分です。
というのも、Product(プロダクト:製品)はその団体の物であり、
Place(プレイス:流通)はその団体のProductと昨今のご時世柄を考えると、zoomなどオンラインでの展開1択となるからです。
そういった理由で、僕は主にPrice(プライス:価格)やPromotion(プロモーション:販売促進)の部分に色々と考えをお伝えするわけなのですが、
ここで役に立つ知識が行動経済学です。
行動経済学を心理職が使った事例
具体的エピソードを出すと分かり良いと思いますので、それをお話しします。
あなたがあるセミナー企画を考案し、それをライブ配信とアーカイブ配信の2種類で販売することを思いついたとします。
その場合、あなたならどういう価格設定にするでしょうか?
考える際の基準が必要かと思いますので、セミナー自体の価格相場は3,000円だと仮にしておきましょうか。
・・・・・・どうでしょうか? 僕が今まで経験したセミナーではたいていの場合ライブ配信をアーカイブ配信よりも低額で売り出していることがほとんどでした。
某団体もそれを倣ってライブ配信を4,000円、アーカイブ配信を3,000円としてました。
でも、最終的にはこの価格を逆転させ、アーカイブ配信の方を4,000円にすることに決定しました。
さて、どうしてでしょうか?
一見すると、ライブ配信の方が講師に直接質問等ができるので、そこで付加価値があるように思えるので、その分を上乗せした価格をつけたくなると思います。
でも、需要としてはアーカイブ配信の方が明らかに高いことが過去のデータから分かっていました。
どうしてアーカイブ配信の方を選択する人が多いのか?というと、それは時間を有効に使えるから、です。
確かに講師に質問できることは即席で情報を得られるという付加価値があるのだが、人々はそれ以上に時間に付加価値を感じている。
この現実がデータから読み取れるわけです。
となると、価値の高いものの方の価格を上げるのが素直な判断です。それに、需要と供給のバランスを考えれば、需要がある方の価格を上げるのも間違っていない。
以上の理由から、アーカイブ配信の方をライブに比べて単価を上げたわけです。
現代社会はもう「情報」にそれほど価値がなくなっているのです。ググれば答えは書いてある。
情報以外に価値を持たせることが、現在マーケティングでは不可欠な知恵となってきそうです。
行動経済学を使うと、さらにもう一歩踏み込める
実はこれだけではダメで、もう一工夫が必要です。
行動経済学によれば、人は3つの価格の選択肢があると、中間の価格を選ぶ傾向があることが知られています。
となると、より一層多くのお客様にアーカイブ配信を選んで頂くためには、2種類のコンテンツでは少ないわけです。
とするならば? もう1つコンテンツを追加したらいい。
ここはそんなに難しく考えなくとも、「ライブ配信+アーカイブ配信」を追加してしまえば立派なコンテンツになります。
当然、この三つ目の選択肢は最も高価格、例えば5,000円といった値段をつける必要があります。アーカイブを最も売りたいわけですから、これを中間の値付けにしなければならないので。
最終的に
ライブ配信 3,000円
アーカイブ配信 4,000円
となり、狙い通り「アーカイブ配信 4,000円」が最もご購入いただける結果となりました。
こんな感じで、心理職として僕は運営の専門家を微力ながらバックアップさせて頂いています。
こういった戦略は行動経済学では基本的な知識として学ぶことができます。
行動経済学は心理職にとてもなじみのある学問
行動経済学って聞くと、難しそうに感じるかもしれませんが、実は僕たち心理職にとっては必ずしもそんなことがないのが有り難いところ。
というのも、行動経済学は、極端に言ってしまうと「従属変数が『お金』ということ以外、全て心理学と同じ」と言ってもいいような学問だからです。
実際、行動経済学に多大な影響を及ぼしているカーネマンという人物は、心理学者です。
行動経済学はかつて「経済心理学」と言われていたとか。やはり、心理学は他の専門性をバックアップするのに長けているな、と思うのですがいかがですか?
興味のある方は一度、行動経済学の本を手に取ってみて、心理学の知識をカウンセリングや心理検査など心理職に代表的なことがら以外にも使ってみてくだい。
消費者の行動選択には心のあり方が投影されているので、心の専門家である心理職が行動経済学の知見を応用することができれば、相当な説得力を持つのではないかと思います。
まとめ
さて、そろそろまとめに入ります。
心理学は他の専門性をバックアップするのに長けた学問。それを学ぶ心理職だって、他の専門家をカウンセリングや心理検査以外の方法でバックアップすることは十分に可能。行動経済学は、実は心理職にこそ馴染みの深い学問であるので、この武器を手に入れれば、よりバックアップが容易となる。
ということで、今日は心理職にとって行動経済学を学ばないことは大きな機会損失であるというテーマでお話しさせていただきました。
このブログでは、心理職としての働き方やお金のことなどについて僕が考えていることをまとめていきます。
それでは次の記事でお会いしましょう。それまでよい日々をお過ごしください。ではまた!