心理職はそろそろ投資家マインドを持つ時期に来ている
リヒト(@r2209)です。 臨床心理士・公認心理師を生業としながら、FP2級を取り、心理職のお金廻りのことを考えています。
今日は、心理職はそろそろ投資家マインドを持つ時期に来ている、と言うテーマでお話ししていきたいと思います。
この記事は先日投稿した
オンラインの普及で学びの機会が増えたことは望ましい。
— 小野寺リヒト🐮心理師×FP (@r2209) 2020年11月25日
けど、流石にもうお腹いっぱい感は拭えない。僕たちに必要なのは、学びにかけた時間、お金、労力等を回収できるコンテンツなのではないか?学びに貪欲な立派な人ほど経済用語で言うところのROI(投資回収率)を意識する必要があるように思う。
を深堀したものです。
ちなみに。
勘違いされるといけないので、先に言っておきますが、今日出す結論は「もう学ぶ必要なくね!?」ではありませんので、くれぐれもその点よろしくお願い致します。
- オンライン勉強会の普及は利便性を増した。が…
- お腹いっぱいの正体
- ROIとは何か
- 学びにおいてROIが大切な2つの視点
- その学びは「投資」になっているか?
- その学びは「回収」できているか?
- まじめな人ほどROIを意識することが大切
- ROIを高めるコンテンツとは
- まとめ
オンライン勉強会の普及は利便性を増した。が…
突然ですが皆さん、オンラインでの勉強会、どう思いますか?
コロナの影響もあって、最近はめっきりオンラインでの勉強会が増えてきています。
当初は「便利になったな」と思っていました。
ただ近ごろはまた違った印象を抱くようになってきています。
その印象とは「いや、もうお腹いっぱいやで……」という感覚。
共感してくれる人がいてくれたらありがたいのですが、皆さんはどうでしょうか?
お腹いっぱいの正体
ただ、冷静に考えてみると「勉強する機会が多い」っていうのは喜ばしいことのはずなんです。
なのに、このお腹いっぱいな感覚って何なんだろう。不思議。
その理由、しばらく考えてみたのですが、僕の頭に「ああ、ROIか」いう言葉がパッと浮かんできたとき、いたく納得しちゃった自分がいました。
このROIって考え方、これから先めちゃくちゃ大事になってくるのではないかと思っています。
ROIとは何か
ROIと言うのは心理学用語ではありません。
ですので、馴染みのない方も多いと思います。簡単に触れておきますね。
ROI(Return on investment)とは、経済用語で投資回収率を意味する言葉です。
自分が投資した結果、それをどれだけ回収できたのかを測る指標。読んで字のごとし。
このROIの考え方、学ぶ機会が無尽蔵に膨れ上がっていく昨今の学習環境にあって、とても大切な考え方になってきているなと思います。
学びにおいてROIが大切な2つの視点
ROIの考え方を持つことは、2つの点で大切だと思います。
一つ目は「果たしてそれは投資となっているのか?」という視点を持てるからです。
ROI云々を考えるには、前提として「投資」を行っている必要があります。もし投資のつもりでやったことが投資ではないのなら、ROI以前の問題です。
二つ目は、「投資した分をどうやって回収するか?」という視点を持てるから。
学びだって、当然コストゼロでなされるものではない。
僕たちの時間、お金、労力、そういったものを「学び」のために投資しているわけです。
投資である以上、そこからのリターン(配当)を期待するのは当然の発想だろうと思います。
というか、学びというものは、それによって何かしらのゲインがないのなら、そもそも何の意味もない。
その学びは「投資」になっているか?
まずは一つ目の視点から、みていきたいと思います。
オンラインの普及であまりにも勉強の機会が増えすぎています。
今日はこっちのオンライン研修、明日はあっちのオンラインワークショップ。
「土日はすべてオンラインで埋まっている」、そんな状況を作り出すことは、全く難しくない有様です。
そんなオンライン勉強会百花繚乱の時代の影響もあって、一つ困ったことが起きている。
それは
圧倒的に時が足りない!
研修動画を2倍速にして隙間時間に必死で観る、とりあえず消化する、こんなことが現実に起きてもいるわけです。
でも、こういう勉強の仕方って、情報を摂取することが目的化してしまうリスクが常に付きまとうのではないかと、そう思わなくもない。
仮にそうだとすると、自らは「これは投資だ」と思っているつもりでも、その実「消費」や「浪費」になっていた、そんなことも十分あり得てしまう。
これは学びの本質から大きくズレたものと言わざるを得ない。
その学びは「回収」できているか?
続いては、「投資した分をどうやって回収するか?」という視点をみていこうと思います。
学びの結果、僕たちは果たしてどれほどのものをリターンとして回収できているだろうか。
回収できる先として真っ先に挙げられるのが、日々の臨床実践の中だろうと思います。
僕たち心理職は、クライエントが満足してくれたらとても嬉しい。クライエントの福祉に少しでもつながることがあれば。そう思うからこそ僕らは学びに投資するし、この仕事を続けることができている。
クライエントの満足は、心理職にとって何物にも代えがたい喜びであり、すべてが報われるような気がします。
学びにかけたコストは、ここで十分回収されている。
そう考えることもできます。
ただ、一方で、この喜びだけに依存する回収は、容易に「搾取」の構造に陥りやすい。
いわゆる「やりがい搾取」というやつです。
僕らは心理職である前に一人の人間であり、やりがい以外にも満たされる何かが欲しい。
僕たちが提供するモノが、仮に何かの形を有する製品であったなら、学びを通して得た知識やスキルをそこに反映させ、客観的に評価を受け、それ相応の値段をつけることができたかもしれない。
抽象画や有名人が描いた絵ではない限り、似ている似顔絵と似ていない似顔絵であれば、より技術が反映されている似ている似顔絵の方が価値が高い。価値が高ければより高く売れる。
ところが、言うまでもなく、僕たちが提供するモノはカウンセリングなどといった形のない無形の財。
なかなか客観的に良し悪しを判断できる類のものではないのです。
なので
最近、学会で身につけた知識をあなたのカウンセリングに取り入れていますので、今日のカウンセリング料はいつもより2,000円多めにいただきますね
そんな風にはならないわけです。
もっと言っちゃうと、
学派によっては学びを通して上手になればなるほど短期で終結を迎えることができてしうので、収益が下がる可能性だって生じてしまう。
(新規のクライエントが絶えず来院するのなら話は別だが、一般的には新規顧客を獲得するのは、リピートしてもらうことの5倍コストがかかると言われている)
どうやら心理職というものは、学びを通じて「やりがい」を回収することはできるけど、その他のリターンまで合わせて考えると、ROIは極めて低い状況にある、と言えそうです。
もう「投資」する機会を提供してくれるコンテンツはあふれている。
これからは、ROIを高めるような仕組みやコンテンツが必要だと思う。
まじめな人ほどROIを意識することが大切
心理職はまじめな人が多い。それゆえ勉強熱心な人ばっかりで、僕はそんな心理職が大好きなのです。
そんな心理職だからこそ、ROIの考えを知ってほしい。
・「学び」に投資しよう!投資しよう!となりすぎていないか?
・投資した分を回収しきれているか?
・そもそもその学びは消費や浪費になっていないか?
・ROIが低くなってしまうなら、これ以上の学びへの投資は控えるべきではないか?
・ROIを高めるために、回収を意識した活動はできないか?
こういったことを一度冷静に考えてみてほしい、そう思うわけです。
ROIを高めるコンテンツとは
では、どうやってROIを高めるか。
それは、今までの話と一見矛盾するようですが、「学びの機会を増やす」と言うことだろうと思います。
今までは「自分が教えられる側」という前提になってお話をしてきました。
しかし、もう十分に学んだ、というテーマが誰にだって1つはあるはず(もちろん学びにゴールはないので、「完ぺきだ」なんてものはないでしょうが)。
そういったことを、積極的に発信していくのです。
「誰かに教える」ということをあまり難しく考えなくてもいいんだろうと思います。
大学院受験生にとって、どうやって勉強したのかという情報は相当な価値のある情報です。その中で最も価値のある情報の持ち主は、現役の大学院生でしょう。
若手心理士にとって、高名な先生にバイズを受けるのは気が引けるかもしれない。そんな若手心理士にとって、ちょっと上の先輩的な位置づけにいる中堅心理士のバイズはちょうどいいバイズになるかもしれない。
心理職にとってとっても大切だけど、なかなか学ぶ機会の少ない知識を心理職向けに発信したとしたら。それは相当需要ありそうだし、ROIも高いかも。
いや、そもそもカウンセリングだけがクライエントと会う手段じゃないのだから、もっとクライエントにとって有益な情報をお伝えしてもいい。それが「予防的メンタルヘルス」に寄与するなら理にかなったり。
学んだものを、学びたいと思う人にシェアする。
これがROIを高めるコンテンツの一つの例となるかと思います。
きっともっとたくさんあるはず。
みんなと一緒にROIを高めるコンテンツを考えていければなと思っています。
まとめ
長くなりました。ここまで読んでくださり、ありがとうございます!まとめますね。
オンラインの普及で「学び」に投資する機会は明らかに増えたが、一方でその弊害が出てきている。1つは「投資」のつもりが「浪費」や「消費」になるリスク、2つ目は投資したものを回収しきれなくなるリスク。
いずれもROIの考え方を抑えることで、その弊害に気付きやすくなる。まじめな人ほど学びの機会を多く持つので、学びを活かしきるためにROIを知ってほしい。
ということで、今日は、心理職はそろそろ投資家マインドを持つ時期に来ているというテーマでお話させていただきました。
このブログでは、心理職としてのお金や働き方などについて僕が考えていることをまとめていきます。
それでは次の記事でお会いしましょう。それまでよい日々をお過ごしください。ではまた!