【インボイス制度】心理カウンセラーにも関係するの?わかりやすく解説します!
リヒト(@r2209)です。
2023年から、インボイス制度がはじまるみたいだね。個人事業主やフリーランスの方々にとっては、けっこう懸念事項の多い制度みたい。
確か、年間の売り上げが1000万以下でも消費税を払わなきゃとかどうのこうの~、っていう話ですよね?
うん、まあざっくり言うとそういう話。笑
心理カウンセラーにも関係する話なんですか?
今日はその辺りについてお話していこう。結論から言うと、「心理カウンセラーにはあまり関係がない」です。
どうして関係がないかはしっかりとインボイス制度について一緒に検討しながら見ていきましょう!
インボイス制度とは何か?
そもそも、インボイス制度とは何かをご存知ですか?
この制度は個人事業主やフリーランスでもなければそれほど関係のある制度ではありません。ですから、存在自体を知らない人がいたとしても無理もないことだと思います。
一方、個人開業をしている心理カウンセラーの方々にはもろに関係する「かも」しれない制度ですから、何となく耳にしたことはあるかも知れません。
ごく簡単にインボイス制度のことを説明すると以下の通りです。
要は、2023年10月からはインボイス方式を採用しましょうという制度です。
ここでいうインボイス方式とは、課税事業者が発行する請求書や納品書(これをインボイスといいます)に記載された税額「のみ」を控除することができるというものです。
このような仕組みで控除されるものを「仕入税額控除」と言います。
(え?全然簡単じゃない?とりあえず今の段階では「仕入税額控除」という言葉だけ頭の片隅に入れておいていただければOKです!)
誰だって、控除を受けれるなら受けたいと思いますよね?
その条件を巡って、現状と大きく異なる条件が必要となり、一部個人事業主やフリーランスの方々には動揺が走りました。
Twitterで確認した限り、僕の周りの個人開業している心理カウンセラーの方々も、インボイス制度について色々と疑問や不安を感じておられるようでした。
インボイス制度の前と後
インボイス制度は、2016年11月末に可決・成立した税制改正関連法により、2023年10月に実施される予定となりました。
まだ実施されていない制度ではありますが、一部の個人事業主・フリーランスの方にとってはかなりの痛手となる可能性がある制度ですから、今のうちに対策が必要となってきます。
まずは現状を確認し、その後、インボイス制度が導入されることでどう変わるのかをご説明します。
なお、ここでは分かりやすさを第一優先にして、非常に簡潔にご説明します。
もし、より掘り下げてお調べになりたいときには、Google先生などにお聞きください。
インボイス制度の「前」
個人事業主のイラストレーターと、企業とのやり取りを例にご説明します。
まずは企業の立場に立った説明をしていきます。
ある企業が自社の製品をPRするためにYouTubeで動画をアップしようとしたとします。
動画の再生数を上げればそれだけ売り上げに貢献するはずですので、企業はそのための案を画策します。
そんなとき思いついたのが、素敵なアイキャッチ画像を動画にくっつけることでした。しかし、その企業にはイラストのノウハウがありませんでしたので、個人事業主のイラストレーターに外注をすることとしました。
さて、この場合、当然企業はイラストレーターに完成したイラストの代金を支払う必要があります。そこでは消費税込みのお金が支払われます。
仮に、イラストの作成費が1万円とします。この場合消費税を10%とすると1000円となりますから、合計で11000円を企業はイラストレーターに支払うことになります。
このような企業努力の甲斐があり、PRした商品が合計10万円の売り上げを上げたとします。
すると、企業はその10万円と10万円にかかる消費税分の1万円、計11万円を手にしているはずです。
このうち、消費税の1万円は企業の収益でしょうか?もちろん違います。
消費税は間接税といって、本来消費者が払う分を一旦企業があずかって、代わりに後で企業が国に納めるのです。ですから、この1万円は納税する義務があります。
しかし、よくよく企業の立場になって考えてみると、この1万円をまるまる納税させるのは酷です。
なぜなら、10万円の売り上げを上げるためにかかった「経費」※、つまりイラストレーターに外注して購入したイラストに対して、すでに消費税を払っているわけだからです。
※「経費」というのがポイントです。ここは後の話に係わってきますので頭の片隅においておいてくださいね。
もしまるまる1万円を納税するということになると、国にも消費税を払い、イラストレーターにも消費税を払うということになりますから、二重取りをされていることになります。
ですので、こういう不利益にならないために、商品を売って預かった1万円の消費税からイラストレーターに既に支払った1000円の消費税を差し引いた9000円だけを国に納めればよいということになっています。
これを「仕入税額控除」といいます。
以上は企業の立場に立って考えてみているわけだけど、ここまではOK?
大丈夫です!
では次に、イラストレーターの立場になって考えてみましょう。
先ほどまでの例の場合、イラストレーターは企業から消費税1000円を預かっています。
消費税は間接税ですから、本来はイラストレーターが企業の払った消費税を代わりに国に納税しなければなりません。
ところが、イラストレーターの年間の売り上げが1000万円以下の場合、実は納税しなくても良いのです!※
※正確には、「基準期間における課税売上高が1000万円以下である場合」です。基準期間とは、納税義務の判定をする際に用いられる期間のことで、個人事業主の場合は、その前々年、法人の場合にはその事業年度の前々事業年度が基準期間となります。
ということは、当年の売上高が1000万円以上であったとしても、前々年の売上高が1000万円以下なら免税ということですね!
そういうこと!
なお、基準期間における課税売上高が1000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1000万円を超え、かつ、給与支払高が1000万円を越えている場合には課税義務が発生します。
特定期間とは、個人の場合は前年の1月1日から6月30日、法人の場合は前事業年度の前半6ヵ月間です。
図にしてみました。
インボイス制度の「後」
現状がどういう仕組みになっているか、おおよそのところはお分かりいただけたでしょうか?
さて、ではインボイス制度がはじまったらどうなるのでしょうか?
今度はそれを見ていきます。
先の例(企業とイラストレーターの例)をもとに結論を言います。
企業は、イラストレーターが免税業者(前々年の売上高が1000万円以下)の場合、仕入税額控除を受けられなくなります!
えっと、企業が少し損をする制度ということですか?
いや、そうとも言えるけど、そうとは言えない面もあるよ。もしココロちゃんが企業側だったら、今後どんな人に外注したい?
あ、仕入税額控除を受けたいから、課税業者と取引したくなります!
ということは、1000万円以上の売り上げない個人事業主やフリーランスの人、つまり免税業者の人たちは、今まで受けていた仕事を受けられなくなるかもしれない、ということですね…!それは大変だ。。。
そうなのです。ココロちゃんの言う通りのことが起きる可能性があると言うことです。
インボイス制度がはじまると、「適格請求書」がなければ仕入税額控除を受けることが出来なくなります。
この適格請求書は適格請求書発行事業者しか発行できません。
つまり、今まで免税業者だった方に求められる今後の選択肢は、大きくは以下の2つです。
①今のまま免税業者として続ける。
②「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、消費税の課税事業者になる(的確請求書を発行できる立場になる)。
①の場合、企業が控除を諦めることになります。しかし、それだと企業に取ってはマイナスでしかありません。ですから、企業が国に納める消費税分を差し引いた額で仕事を依頼される可能性が非常に高いです。
先ほどの例で言えば、企業がイラストレーターにイラストを外注する場合、控除を受けられなくなった1000円分を差し引いた9000円程度でイラストを描くように言われる可能性が高いということです。
そうなると、今までは一万円で仕事を受け、かつ消費税も受け取れていた時と比較するとイラストレーターの収益は2000円ほど落ち込むことになります。
②の場合、今まで通り企業と取引が出来ます。しかし、消費税を納税することとなります。
インボイス制度について非常に分かりやすく、かつ困惑の様子をtweetしてくれている方がいたので、リンクを貼っておきます。
インボイス制度って、要は今まで免除していた個人事業者からも税金をかっぱぐってことなんだが、それだけ聞くと「免除されてたのか」「ずるい」とか思うかもだが、違うの、実態逆なの。個人事業者って、個人でもあり事業者なの。同じ手取りなら、個人事業者のほうが、倍近く払っているの。いま現在も。
— SOW@新刊発売中 (@sow_LIBRA11) July 31, 2019
インボイス制度は心理カウンセラーにも関係するの?
インボイス制度について、簡単にご説明しましたが、概要はお分かりいただけましたでしょうか?
要は、今まで免税となっていた方々も今後は売上高いかんによらず納税することが(実質)求められるようになった、ということです。
ところでこの制度、心理カウンセラーにも関係するのでしょうか?
結論は、「基本的には関係しない」です。
先ほどの企業の例をもう一度思い出してみましょう。
イラストレーターに外注したのは、自社製品を売り出すのに必要な行為だったからです。つまり、イラストレーターに外注したイラストは必要な「経費」だったわけです。
仕入税額控除はその名の通り、この「仕入」つまり「仕事に必要なもの」に対してかかった消費税に対する控除です。
仕事に必要な物を仕入れた場合、それは経費になるので控除を受けられるのです。
一方、心理カウンセラーがやり取りする相手はクライエントです。
クライエントは我々からカウンセリングという役務(サービス)を受けてくれる訳ですが、この役務にも消費税がかかります。ですから、我々はクライエントから消費税を含めたカウンセリング料をいただきます。
1回5,000円のカウンセリングなら、消費税10%の場合、5,500円をクライエントから頂く訳ですね。
ただ、重要なのは「経費かどうか」です。
経費として認められるのは、それが「仕事に必要なもの」かどうかでしたよね。
クライエントにとって、カウンセリングは「仕事に必要なもの」でしょうか?
ほとんどの場合、違いますね。
もちろん、精神的に参っていると仕事上のパフォーマンスが低下しますので、カウンセリングに通って回復するほうが仕事の役に立つでしょう。
しかし、カウンセリング行為が「直接」その仕事に係わっているかというと、そうではありません。
また、スーパーバイズを受ける/する場合も同様です。
先ほどの企業とイラストレーターの例に当てはめて考えると、バイジーが企業、バイザーがイラストレーターに該当することとなりますが、バイジーがSVを受けたことは何か他の仕事を生み出すのに直接必要なものではありません。
従って、バイジーは仕入税額控除を受けることはできないでしょう。
ですから、バイジーはバイザーが売上高1,000万円を超えているかどうかを気にする必要はありません。笑
余談ですが…
SVを受けることが、普段のカウンセリングに直接必要とされるものかどうかを考えた場合、非常に微妙です。
場合によっては「経費」として認められるかも知れませんが、最終決断は税務署にしかできません。超凄腕の税理士を味方につければ、税務署と話し合って「経費」としてくれるかも知れませんが、可能性は低そうです。
少し話がそれました。
話を「インボイス制度が心理カウンセラーにも関係するかどうか」に戻すと、「ほとんど関係しなさそう」というのがここでの結論です。
ただ、僕たち心理カウンセラーにも、一部インボイス制度が関係しそうなこともあります。
例えば、企業から「社員研修の一環として、メンタルヘルスについてのレクチャーをして欲しい」などという依頼を受ける場合です。
この場合の研修は、「経費」となりますので、仕入税額控除の対象となることが予想されます。
そのため、もし僕たちが免税業者であった場合「それだと控除が受けれませんので、他をあたります」と断られる可能性が大です。
とは言うものの(これは個人的な意見ですが)、よっぽど研修講師に比重を置いていない限り研修の依頼での収益は相対的に他の業務と比べれば少ないでしょうし、そのためにわざわざ適格請求書発行事業者になるのは早計なような気もします。
もちろん、大企業と個別契約を結んでおり、1回当たりの研修で得られる収益が莫大ということも人によってはあるでしょうから、一概には言えませんが。
ただ、仮にそうだとしても、「控除は受けれないかもしれないが、それでも是非あなたに依頼したい。あなたにしか出来ない」と言ってもらえるくらいの力をつけないなと、個人的には考えています。