心理職でもできる資産形成と運用

心理職でもできる資産形成と運用

FP×心理Thによる資産にまつわるアレコレのお話

投資の大原則

 

本書は、超有名投資家 『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理』のマルキールと『敗者のゲーム〈原著第6版〉』のエリスにより書かれた、誰にでもできる健全な投資手法についてまとめた本です。

 

バンガードの最高投資責任者であるガス・ソーターを持ってして

高校でこの本を読むことを義務化するといい。

P6 

 と言わしめるほどの原則も原則、大原則を解説しています。

ここでいう大原則とは、

貯めたお金を何倍かにして目標額に達するようにお手伝いをする道しるべ

P5

のことを意味しています。

 

ただ預金するだけでは、今の時代ほとんど金利にも期待できないので絶対に「何倍か」になることはありません。

じゃあ、なんで預金をしているのかというと、投資を怖いと思っているからです。

 

でも、「投資は怖いから、預金でいい」とも思ってないですよね?

だって、誰だってお金はあるに越したことはないし、「目標額に達する」方法があれば、本当は試してみたいですよね?

 

怖いなら、知れば良いのです。知ればその分怖さは収まっていきます。

 

そもそも、実は預金も投資の一つなんです。

だから、もう既に銀行を利用している人は、誰もが投資家であるといっても過言ではないのです。

だとしたら、より目標額に到達する見込みのある投資に切り換えた方が合理的だと思います。

 

 

投資手法は様々なものがありますが、著者2人が述べる最良の方法は、ずはり、インデックス・ファンドです。それも手数料の安いインデックス・ファンドです。

 

投資に怖い印象を与える要因の一つは、その資産を売り買いするタイミングを間違えることで、大損するというイメージでしょう。

しかし、著者2人は売買のタイミングはそれほど気にする必要はないと主張しています。

なぜなら、売り買いをするたびに手数料がかかり、その手数料が投資リターンを下げているからです。ですから、一度長期投資戦略を作ったら、そ基本的にはれを一貫させることの方がより重要なのです。

 

では、どんな投資戦略を作ったら良いのか?気になるところかと思います。

 

ですが少し待ってください。

 

投資における、最初の大原則は「まずは貯蓄を始めよう」です。

 

貯蓄するには、当然ながら支出を収入以下にするということです。

「当たり前じゃないか」と思われるかも知れませんが、実は多くの人がこの原則を無視しています。

車や家を買う時、ローンを組むと思いますが、ローンは借金です。

借金をしている時点で、もう収入以上の支出をしているということになります。

 

※ただし、

住宅ローンの利率はカードローンの利率よりはるかに低い。

P53

等の理由から、本書は「住宅ローンOK」という立場のようです。

とはいえ、日本の事情と当てはまらないこともあり、僕自身は「住宅ローンもNG」と考えます。ただし、これは経済的価値に焦点を当てた場合です。

持ち家を持つのが夢だった!など、経済的価値以外の側面を重視する人の場合は、ローンを組むことも夢の一環でしょうから、それも一つの人生の楽しみ方であると思います。

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物を先に手に入れようとするからお金がなくなり、お金がないから投資に回せない。投資に回せないから、お金を増やせない、という悪循環にならないように気をつけましょう。

 

一方、先にお金をある程度ためて、それを投資に回せばお金が増えるので、お金も物も手に入るのです。

どちらがいいかは一目瞭然のように思います。

 

このことを理解したら、できるだけ若いうちから投資を始める方が良い、というのが著者2人の考えです。

それは、あまりにも複利の力は絶大だからです。

複利とは、

投資で得た利益を再投資(複利)すること。

P34 

 です。

お金がお金を生み出すのです。

仮に年10%のリターンがある投資に10年間複利で投資し続けたとすると、もともとあった100ドルは260ドルになる計算になります。銀行に10年100ドル預けてもこうはなりません。

 

この複利の力の恩恵に預かるには、まずは種銭がなければはじまりません。

種銭は日々の暮らしで使うお金を節約して貯めるしかないでしょう。

著者2人が進める節約のコツは、節約をゲームのように捉えることです。

例えば、衝動買いをおさえるために、あらかじめ欲しいものリストを作成し、それ以外の物は決して買わないルールを決めて実践してみるとか。

 

他にも具体的なアイデアが書かれています。ちょっと「クスッ」と笑ってしまうものまで。

一例を挙げるとこんな感じです。こつこつ貯めるなら↓

✔️クリスマスカードを今年の12月26日か27日に買う–––来年用を。

✔️外食するとき、まず好きな食べ物を2つ選ぶ。そして、そのうちの安いほうを注文する。その差額はポケットに。前菜もなるべく安いものを注文。前菜は一番好みが出るから、そうすればポケットにはもっと入る。

✔️映画館に行かずに、最新作をレンタルビデオ店で借りる。自宅でポップコーンを作り、冷蔵庫にある飲み物を飲みながら。

✔️古本をアマゾンで買う。最新ベストセラーでも。

P47

こういったものだったら、真似できそうですよね。

 

大きく貯めたいならこちら↓

✔️新車に近い中古車か、これまでの車より小さい車を買う。この2つの条件の両方とも満たせばなお良い。

✔️給料の5〜10%を天引き預金する。そして、それを税金のかからない口座に繰り入れる。こうすれば、自分のためのお金をとっておき、税金は少なくなり、無駄遣いもできない。

P48–49

 

世界一の投資家ウォーレン・バフェットは何百億ドルもの資産がありながら、質素倹約な暮らしをしているそうです。お金があるないは、節約できる出来ないに大きな影響を与えないのです。

物の本当の価値が分かれば、物の値段に騙されないようになるはずです。

 

このようにして、お金を貯めることができたら、いよいよ投資にお金を使う番です。

先述のように、本書が進めている投資手法はインデックス・ファンドです。

インデックス・ファンドとは

 株式市場(または債券市場)のすべて(すべてではないときもあるが)を、銘柄を選ばずに単純に買うもの

P60

 です。つまり、すべての主要企業の株主になる、ということです。このインデックス・ファンドは「この銘柄を買って損した、得した」と心配する必要がありません。

 

なお、インデックスとは指数を意味します。日本なら、日経平均株価TOPIXなどがその代表ですし、アメリカなら、S&P500などがそうです。

 

 そういった指数に連動したインデックス・ファンドに定期的に一定額ずつ投資し続けます。この方法をドル・コスト平均法と呼びます。

こうすると、高い時には少ししか買わず、株の価格が低い時には多く買えるのでリスクの分散になるのです。

ドル・コスト平均法については、カブドットコムさんの図が分かりやすかったので、添付します。

【コラム】お金への不安は軽減できる!?|プレミアム積立(プチ株)|プチ株(単元未満株)|商品・サービス|株のことならネット証券会社【カブドットコム】より引用

 

 

ドル・コスト平均法を続けるとともに、「大きな失敗を避ける」も投資の大原則です。

大きな失敗を避けるためには、知識をつけることがとても重要です。

何の知識をつけたら良いかと言うと、投資の勉強と、後もう一つあります。

 

それが実は、心理学なのです。

 

心理学の中でも「行動経済学」が特に勉強しておけると良い分野だと思います。

行動経済学は、正確には経済学に分類される分野ですが、やっている手法は行動心理学そのものです。

行動経済学を学んで、人がいかに理屈に合わない行動をしてしまいがちかを知れば、投資判断にバイアスがかかっていることに気づきやすくなるでしょう。

 

投資の文脈でいう「バイアス」が生じる時とは、株の値動きが予想できていると判断するような時です。

 

例えば、「売りたい」と思った時は、「どんどん株価が下がっていくだろう」と予想した時な訳です。

しかし、「誰にも今後株が下がっていくかどうかなんて分からない」という事実を鑑みれば、その判断は非合理的だとすぐに気づくはずです。「売らずに持ち続けなさい。それが最も合理的だ」ということになるのです。

 

株価がちょっとでも下がると不安になり、その不安が人が合理的は判断をすることを妨げてしまうのですね。

 

投資をする際、何にどれくらいの配分で行うかも考える必要があります。

どのように配分するかは、その人の性格や年齢、目的などによっても様々です。

例えば、若いうちはリスクを取れるでしょうから株式を多めにし、逆にあまり若くない場合は債券を多めにしてリスクを避ける方が良いでしょう。

 

このようなコツも本書には具体的に書かれています。

編集後記本書には「インデックス・ファンドを買って持ち続けよう」という主張が過去の実績をもとに繰り返されています。ですから、投資を既にやっている人からすれば「当たり前じゃん」ということも多くあるでしょう。
しかし、投資は情報の非対称性がものすごく大きい分野です。知っている者と知らざる者の情報量が天と地の差ほどあるのです。ですから、投資経験者からすると「当たり前」ということでも、初心者からすると「目から鱗」ということが往々にしてあります。
本書は初心者にとってはまさに目にこびりついている鱗をはがしてくれる、そんな役割を担っています。投資に興味はあるけど不安を抱いているという方は、まず本書を読んでみるのはいかがでしょうか?

年収90万円で東京ハッピーライフ

お金という価値観にとらわれない、ある一つの理想形の生き方

 

著者は週休5日の悠々自適な生活を、わずか年収90万円で実現させている、いわばツワモノです。

 

「そんなんで生活できる分けがない。どうせ他に収入源を持つ資産家なんだろう?」

 

そう思われる方もいらっしゃるかも知れません。

僕も最初はそう思いました。

 

 

しかし、ご本人曰く

ITや株で儲けてアーリーリタイアとかいう、経済的に恵まれた話ではありません。宝くじも当選してなければ、親の遺産もない。

P4 

 とのことです。

 

特別な資格を保有している分けでもなさそう。介護の仕事を週2でしているそうですが、無資格だそうです。

 

ご両親は「貧乏」と「借金」が口ぐせの母親と、ごく普通のサラリーマンの父親で、割れた窓ガラスは段ボールで塞ぐような家で幼少期を過ごされたようです。

 

このような、まったく資産がない状態でどうやって年収90万で生活するのか、ましてやそれを東京でするのか…

 

興味が尽きません。

 

本書には、色々とそのノウハウが詰まっています。

ご紹介できる限りご紹介していきましょう。

 

 

まず、一日30品目食べるという目標を放棄します。

玄米とお味噌汁、そしてサバのみそになどがあればそれを食べます。

 

他の食材はスコーンを自分で適当に作ったり、野草をとってきます。

野菜を買ってくることもありますが、農家直売所とかで無農薬野菜を買い、「一物全体」の精神で皮から何まで余すところなく食します。

野菜は皮などに栄養が豊富に含まれていますので、食材の量が少なくても充分に栄養は足りるのだそうです。

 

着る服は、特にこだわりなく着れる物を着ます。

 

住んでいるアパートの家賃は2万8,000円。

 

年金は全額免除です。きちんと免除申請をしているそうなので、将来支給されないということもありません(もちろん全額は支給されませんが)。

 

どうでしょう?

 

とっても参考に……ならないノウハウですね。

 

なんだよ!結局特殊な人間の特殊な生き方で、何の参考になりもしない!

 

そう思うかも知れません。

しかし、もしこの本がただのノウハウ本であったら、僕はこのブログには絶対に紹介してはいなかったでしょう。

こうやって記事を書くのにも時間がかかります。読んで損した本だったら、そんなことに時間を使わず、次の本を読み始めることでしょう。

 

 

本書の価値は、著者のその人生哲学にあります。

この生き方のカッコいいことカッコいいこと。

 

著者は、僕なんかが見ると「もしかして発達障害?」と思ってしまうくらい、本当に仕事も何も出来ないダメダメだったそうです。

 

中華料理屋でアルバイトしていたときも

 本当に、冗談抜きで、ぜんっぜん使えなかった

P149

 らしく、ヤンキー上がりのマスターに死ぬほど怒られていたそうです。

 

毎日お皿を割り、バックルームから「ビールを持ってこい」と言われたときにはケースごと持って行くのではなくビン一本だけを持って行ったり、ラーメンの盛りつけは毎回オリジナルの盛りつけをしたり、そんな失敗ばかりをしていたそうです。

 

中学の時から高校を卒業するまで、ずっと同じジャージを着て学校に行っていたそうです。

得意だった英語は学年トップなのに、そうではない数学は0点。

 

そんな特徴的な著者は、中学の時には殺されかけるほどのイジメを受けていたそうです。先生の目の前でいじめっ子から殴られていても、その先生は助けてくれませんでした。

あまりにもひどいイジメだったので、親にも恥ずかしさのあまり相談できず、家に避難することも出来ませんでした。

 

おまけに、先述の通り、著者の家は貧乏でしたから、サンタクロースも家に来てはくれませんでした。

 

踏んだり蹴ったりで、良いことがない人生のように思う人は思うかも知れません。

 

このような経験から、著者は「人間は平等ではない」「ルールってなんだ?」「フツーってなんだ?」ということを常に考えさせられていたそうです。

 

そういったこともあって、著者は「もうフツーにこだわるのをやめよう」と、そんな風な考えに至ったんだと思います。

 

そこから著者は、やりたいことは相変わらず見つからないけど、やりたくないことを避ける生活をしようと考え、その自分の価値観にそって生き続けることを選んだのです。

その結果が、著者にとってはたまたま年収90万円で生活できる隠居生活だったのです。

 

「フツー」だったら思いついてもやらない生き方ですが、彼は自分の哲学を貫いたのです。

 

僕たちはもしかしたら「フツー」にこだわりすぎているのかもしれません。

「フツー」になるために、本当は自分には向いていないことや好きではないことも知らず知らず、よく考えずに実現させようと躍起になっているのです。

 

一人ひとり人は皆違うのに、画一的な「フツー」に収まろうとするなんて、よくよく考えたらとっても変なことですよね。

 

もちろん、著者のような生き方は誰しもが真似できるものではないし、また、真似したいとも思わない人が大半でしょう。

 

でも、彼にとったらこれが最高の生き方なのです。

 

現実的なことを考えれば、このままの生活をしていたとしたら、老後苦労するのではないかと思います。

でもそれはあくまでも客観的なものの見方であり、著者の主観ではどうかわかりません。著者は苦労すら受け容れ、楽しめる方なのではないかと思います。

 

世間では「孤独死」と呼ばれるような死に方を仮にしたとしても、きっと本人は「満足死」として、その死を天国で捉えることでしょう。

編集後記本書を読んで、僕は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。「こんな生き方があるのか!?」って。

とはいえ、僕は野草をとりに行くつもりもないし、仕事を週2に減らすつもりもないし、年金も払い続けます。

「心理職として経済的に豊かになりたい。心理職全体がそうなるような仕組みをつくりたい」と思っているからです。まったく著者と価値観が違うのです。
僕は(大金持ちではなくても良いし、もちろん建設的で社会に貢献できる形で)経済的な豊かさを求めているのです。

ですが、著者の「自分の信念に真っ直ぐ正直に」「悔いのないように」という生き方はとても参考になりました。
人は信念を持つと、「こうあらねば」と硬くなってしまいがちです。でも著者にはそれが一切ないのです。
翻って、僕は最近ちょっと硬くなっていたなあと、本書を読んで感じました。

誰と競っている訳でもないのですよね、本当は。自分の信念を大切にしつつ、著者のように気軽な感じで、この信念を抱き続けていきたいなと思います。

最長2年!育児休業の制度について分かりやすく解説!

 Family, Newborn, Baby, Child, Infant, Happy, Mother

 

リヒト(@r2209)です。
資格とってカウンセラーになるのって、結構大変だからそれなりの覚悟を持ってカウンセラーとして勤めている人って結構いると思う。

 

そういう人確かに多いかも知れませんね。私の友だちも最近子ども生まれたんですが、落ち着いたらまた仕事復帰したいっていってました。

 

今日は、そんなママさんカウンセラーやイクメンパパカウンセラーの方達にとって役に立つだろう育児休業制度についてまとめてみたよ!

 

 

産休と育休について簡単に説明します

妊娠し、出産したら、その間育児休業をとることが出来ます。

 

育児休業は、子供が生まれた翌日から1歳になるまでの期間、休業できるという制度です。

この制度は「育児・介護休業法」で定められています。

 

育児休業は、「産休」が明けた日から取得する方が多いでしょう。

 

産休は、産前休業と産後休業に分けることができます。

出産予定日までの6週間(42日間)が産前休業できる期間、出産後8週間(56日間)が産後休業できる期間です。

 

世に(42)出る頃(56)と覚えましょう。

 

こちらは、労働基準法によって定められており、雇用先に申請することで誰でも取得できます。

 

産休・育休を図にするとこんな感じです。

f:id:r2209:20190923124305p:plain

 

なお、残念なことに、産休中も育休中も、原則としてお給料は発生しません!

 

え?じゃあその間どう生活したら良いんですか?

 

 

それについては、これから詳しく見ていきましょう。

 

なお、この記事では主に育児休業について詳しく解説しますので、産休期間についてはごくごく簡単に解説しますね。

 

 

産休中、どう生活したら良い?

先述のように、産休中はお休みをしているわけですから、原則お給料は発生しません。

しかし、まったく何の援助もなければ生活が困窮してしまうことになりますよね。

 

ですから、そんな困ったことにならないように、健康保険制度から出産手当金の支給を受けることが出来ます(健康保険に1年以上継続して加入している場合)。

 

 

気になる出産手当金の支給額ですが、

日給×2/3×産休で休んだ日数分支給されます。

 

※「日給」とは標準報酬月額(年収(残業代・ボーナス・各種手当込み)を12で割った月収)を30で割った金額。

 

いつものお給料のだいたい三分の二くらいは貰えると考えてもらえればいいかと思います。

 

妊娠したことが分かったら、勤め先の人に相談したら手続きから何まで教えてもらえると思いますよ^^

 

 

育児休業って、どういう制度?

 無事産休が明けたら、今度は育児休業期間に入ることになるかと思います。

産休は女性しか受けられない制度でしたが(男性は妊娠できませんので)、育休は男性も利用することができます

 

まあ、子育てはお母さんだけの仕事じゃないんですから、当たり前ですよね。

 

育児休業を利用するには、ある一定の条件があります。

 

まず、父親・母親がどこかの期間に勤めていなければなりません。

この制度は「育児・介護休業法」で定められていると先述しましたが、実はこの法律の正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」であり、労働者向けのものだからです。

 

つまり、個人開業しているような、個人事業主の方は利用できない、ということです。

 

まあ、個人事業主の方は自分のペースで仕事を選べるわけですから、休みたければ誰のお伺いも立てることなく、自由に休めるからそもそも関係ないですよね。

 

ただ、育児休業が労働者のための制度、ということから必然的に分かると思いますが、個人事業主の方の場合、自主的に育児休業期間を設けたとしてもその期間中に利用できる制度もない、ということになります。

 

労働者の場合、育児休業を利用すれば、その期間のお給料が発生しない分の補填として、雇用保険制度から育児休業給付金が支給されます。

 

なんか、個人事業主の方って本当に手薄い制度しか受けられないんですね。。。大変そう。。。

 

そうなんです。

以前も記事にしましたように、傷病手当金個人事業主の方は受けられないし、本当に大変だと思います。 

r2209.hatenablog.com

 

しっかりと稼ぎ、貯蓄していく必要がありますね。

 

 

育児休業給付金を受け取るには他にも条件があります。

それが、

・「育休」を申し出る時点から見て、勤務先で1年以上働いている

・子どもが1歳6カ月になるまでに、勤務先との雇用契約が終わらない

 

などです。

 

ざっくり言うと、今勤めている勤務先に一年以上在籍し、育休後もそこで働く見込みである時に利用できる制度である、ということです。

 

 

育児休業給付金はいくら貰えるの?

育児休業給付金は、原則として育休開始日から180日目までは月給の67%が支給され、181日目〜育休最終日までは育児休業が50%が支給されます。

 

これが基本的に子どもが一歳になるまで支給されます。

 

ただ、この期間を延長する方法が大きくは二種類あります。

それが、夫婦2人ともが育休を取得することと、もう一つが、「育児休業の継続がやむを得ない事情がある場合」です。

 

 

パパママ育休プラス

 本来、子どもが一歳になるまでの期間が育児休業給付金の支給期間ですが、両親ともに育休を取得した場合、子どもが一歳二ヵ月になるまで期間が延長されます。

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両親がともに育休を使うパターンとしてはこのようなパターンが考えられます。

夫婦のライフスタイルに応じて、相談してどのパターンで利用するか決められると良いでしょう。

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また、ある条件を満たせば、父親に限っては2回育児休業を利用することが出来ます。

これも覚えておくとよいかも知れません。

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(上記三つの図はいずれもhttps://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169713.pdfより引用)

 

 

 

特別の事情があるときは、子どもが2歳になるまで育児休業を延長できる

今度は、「育児休業の継続がやむを得ない事情がある場合」を見ていきましょう。

 

繰り返すように、基本的に育児休業給付金は産後休業の翌日(産後57日目)から子どもが1歳になるまでの支給です。

 

しかし、子どもを外に預けようにも、保育園に入所申し込みをしたものの入所できなかったり、

配偶者が病気等、やむをえない事情で養育が困難になったり、

配偶者がなくなってしまったり、

 

と言うことが起きて、とてもじゃないけど、仕事に復帰できないということが起き得ますよね。

こういった場合は、最長で1歳6ヶ月まで育児休業給付金が支給されます。

 

 

ところが、子どもが1歳6カ月になってもまだ仕事に復帰できそうにない、と言うことだってあり得ますよね。

 

そのため、平成29年10月1日から育児・介護休業法が改正されたことにより、更に半年の延長が認められるようになったのです。

 

つまり、子どもが1歳6カ月になるまで「育休」を延長してきた人ならば、子どもが2歳になるまで延長できるようになった、ということです。

 

図にするとこんな感じのようです。

f:id:r2209:20190923134245p:plain

(https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h29_05.pdfより引用)

 

 

どんな人が育児休業給付金をもらえるのか?

では、どんな人が育児休業給付金の支給を受けることができるのでしょうか?

 

それは、「育休を取得する本人で、育休に入る前の2年間のうち11日以上働いた月が12ヶ月以上ある人、かつ雇用保険に加入している人」となります。

 

ただし、下記に該当する人は育児休業給付金を受け取ることができません。

 

・育休中でも会社から給料が8割以上出ている場合

派遣社員雇用保険の加入期間が1年未満の場合

・育休対象期間中、育休日数が毎月20日以上ない場合

 

要は、育児休業給付金なくてもやっていけそうな人や、勤め先にちょっとの期間しか勤務していなかった人などは受けられない、ということです。

 

 

育児休業給付金の注意点

何かと助かる育児休業給付金ですが、育休に入ってすぐに支給される訳ではありませんので注意してください。

 

はじめて支給されるのは、育休に入ってから3ヵ月後なのです。

しかも、毎月振り込まれる訳ではなく、隔月ごとの支給になります。

 

育休前は、しっかりと預貯金しておくなど、計画を立てておく必要がありますね。

 

 

その他にも、嬉しい制度が

以上、産休と育休について解説しました。

 

子どもを産み育てる際に知っていると嬉しい制度は他にもたくさんあります。

たとえば、出産育児一時金とか、児童手当とか、育児時間とか、生理休暇とかです。

機会があれば、この辺りの解説もしていきたいと思っています。

 

今後も応援よろしくお願いいたします^^

ヤバい経営学

ホントにスーパー経営者!?本田宗一郎さん、めっちゃヤバいやつですやん……!

 

本書は、学術的な経営セオリーを書いた本でもなければ、特定の経営者の武勇伝を伝えたものでもありません。

 

多くの研究を通して見えてきた、会社経営の中にある「隠された真実」を浮き彫りにしようとした本です。

 

つまり、教科書レベルで言われている経営理論を実際に適応すると、どうなるのか、どういうメカニズムが働いて上手くいったりいかなかったりするのか、その現実を暴いているのです。

 

 

これが「ヤバい経営学」です。

 

 

本書はCapter1から8までの8章から構成されていますが、ここでは特に勉強になったCapter1 Capter4の2つの章の内容と感想を述べていきたいと思います。

 

 

Capter1では、「真似すること」のヤバさが書かれていました。

例えばこんな風なことです。

 

経営でも芸術でも武術でも、何でもそうですが「まずは真似から入れ」とよく言われます。この教えに間違いはないでしょう。

 

守破離とは武道や芸術なんかでよく言われるもので、その合理性に疑いはありません。

 

会社経営でも同じです。まずは真似から始めるのが一般的でしょう。

 

しかし、これが目的化し「みんながやっているから」となったり、集団の圧力がかかってくると話が変わってきます。

 

僕たちは「みんながやっている」ことは正しいことだと錯覚する生き物です。だから、時に無自覚にそれを続けます。

そして、正しいことは良いことだとも無条件に認識します。

 

ですから、「みんながやっていること」とは違うことをするのはとっても大変なのです。

 

これらのことから、「みんながやっていること」が実は無意味であるとき、様々な問題が発生してきます。

 

本書に挙げられていた例えはとても分かりやすいでしょう。

たとえば、ある会社がMR活動を中止したとしよう。そして、仮にそれが失敗に終わって、マーケットシェアと利益を失ってしまったとする。そしたら、きっと誰もが「おまえはバカか。誰もそんなことをしていなかったじゃないか」と言うだろう。

P15

 

実はMR活動には、「効果があるかどうか」の明確なエビデンスはないそうです。つまり、意味があるかも知れないし、ないかもしれない。ただ、MR活動に莫大な資金がかかっていることは間違いありません。

ですから、ここのコストをカットすることができたら、より有益な企業活動ができるかもしれないのです。

 

ところが、MR活動は「みんながやっていること」なので、「正しいこと」であり、誰も辞めるに辞めれないわけです。

 

人は自分だけが違った行動をして些細なミスをするよりも、みんなが同じ行動をしてみんなが大きなミスをする方が、精神的なダメージは少なくて済むのです(この理論をプロスペクト理論といいます)。

 

 

特に企業には「株主」がいるので、彼らの考えも汲まなければなりません。

 

例えば、A社が「他の会社もみんなやっていることだけど、絶対に上手く行かないことだから辞めておこう」と思ったとしましょう。

 

しかし、多くの場合、結局はA社もそれをやるはめになります。

 

なぜなら、A社の株主が「他の会社もやっていることをやらないのか。A社は時代に乗り遅れている。もう先がない」と評価し、A社の評価が株主の間で落ちてしまえば、株価も下がって経営に支障を来すからです。

 

 

このように、「真似をする」という経営戦略自体は正しいし、どこの企業もそれをやっているわけです。

 

ところが、その目的までよーくみてみると、精神的なダメージを軽減したいからであったり、株主の評価を気にして消極的理由でであったりと、果たしてそれを経営戦略と言っていい理由でやっているのかどうかを考えると甚だ疑問ですよね。

 

 

 

どうでしょう?本書はこんな感じで経営の真実を丸裸にしているのです!

超面白いと思うのですが!?

 

 

経営というと企業の動向の理論であり、無機質な感じがします。

しかし、こうやって細かく見ていくと、とっても心理学的な要因が強く影響しているのだな、ということを学ぶことができるのです。

 

 

僕はこれからの心理職は「開業モデル」がどんどん一般化してくると予想しています。

その際、経営学についても明るくある必要があると考えるのですが、心理学との共通項を見いだしながら学ぶことができれば、非常にとっかかり安いのではないでしょうか?

 

 

なお、本書に寄れば、模倣しつつも少し差別化するオリジナリティを加えた戦略をとることが良いというようなことが書かれています。

 

ただ、そのオリジナリティを出す際の意思決定に「選択バイアス」がかからないようにという注意があります。

 

気をつけるべき意識決定とは「過去のこういう事例がいくつかある」「この事例の共通点はこれだ」「だからこれを取り入れよう」といった意思決定です。

 

なぜなら、過去の事例で僕たちの目に触れるものは、大抵がうまくいったものだけです。その背景に成功事例を凌駕する数の失敗事例があることを無視してはいけません。

このように、他の可能性を無視して都合の良いものだけを選択してしまうバイアスが「選択バイアス」です。

 

確かに、例えば自分でカウンセリングオフィスを立ち上げようとした時、どのような形態のカウンセリングが流行っているか調べた結果「CBTが流行っている」という数字上のデータが得られたからという理由だけでCBTをやっても上手くはいかないでしょう。

CBTをやっても上手くいかなくなって閉鎖したオフィスの情報は入ってはきませんから。

 

 

では、どうしたらよい選択ができるのだろうか。

 

著者によれば、

結局、より良いアイディアとは、どこからともなくやって来るのだ。

P42

 

教科書や経営者の自伝を見ると、さも合理的なプロセスがあったり、徹底的な分析による戦略判断があるように思えるが、そうではないのです。

 

こういう言説が溢れるのは、

「いやぁ、偶然思いついてしまったんですよ」と言うよりも、なんとなく格好良いだろうという理由なのだ。

P41

 

ということです。

 

結局、外に目を向けるのではなく、自分と向き合うしかないのでしょう。

ライバルがこうだからこうする、だと戦略の建てようがありません。

 

それよりも、自分に何ができるかをスタート地点にし、自分の道を自分の足で歩んでいく方が、自分に合った戦略が見つかるでしょう。その戦略を見つけたプロセスは後から分析したかのように見せかければよいのです。

 

  

合理的な戦略をとっているように見えても、実は周りに流されたり、偶然によって思いついてやっているだけ。これが経営に起きている赤裸々な真実です。

 

 

 

Capter4では、「経営者」のヤバさが書かれていました。

 

「経営者」という言葉から、どんなことを連想するでしょうか?

ワンマン社長、傲慢、自信過剰。

 

多少庶民の僻みもあるかも知れませんが、こういった言葉が思いつくのではないでしょうか?

 

ただ、こういう特徴が社長にむいている側面はあります。

実際、動きの速い業界では、ナルシストの経営者のほうが上手く行く傾向があるようです。

とはいえ、それは程度問題で、ナルシスト経営者は大勝ちするか、大負けするかのどっちかに転びやすく、結果の業績は謙虚な経営者とそう変わるものではないそうです。

 

 

また、ナルシストかどうかはともかく、スターとしてはやし立てられている経営者もいます。

ジャック・ウェルチスティーブ・ジョブズ本田宗一郎などです。ホリエモン孫正義なんかもそうかもしれません。

 

僕たちはこういったスター経営者の会社が成功をおさめると、「やっぱりジョブズは凄いな」などと考えがちです。

ところが、ある研究によると

「スター経営者は、会社の業績に良い影響も悪い影響も与えていない」と結論づけた。

P108

 

ということが分かったらしいのです。

 

 

ではどうして彼らは成功を収めることができたのでしょうか?

 

 

それは単に運が良かったから、です。

 

彼らは普通の人だったら絶対にやらないようなことに手を出します。

確率論的にはそれが合理的な選択だ、と思うようなことは普通はしないのです。

 

しかし、統計を勉強したことがある方なら分かると思いますが、「第一種の誤り」というものがあり、「帰無仮説が正しい時に、誤ってそれを棄却してしまう」という結果が生じることが起きうるのです。

 

つまり、「通常は上手く行かないことが、何故か上手く行っちゃった」ということが確率論的にわずかではあるものの必ず生じるのです。

 

成功した経営者は、この第一種の誤りに運良く当てはまったということなのです。

 

「そんなバカな」「きっと何か他にはないものを優れた業績を残した経営者はもっているはずだ」

 

と思われますか?

 

では、ちょっとこちらを読んでみて下さい。

彼は気まぐれな性格と数々の芸者遊びで知られている。芸者を二階の窓から投げ落としたという話や、(略)会社の存亡がかかった銀行への融資依頼の席に、酒に酔ってコスプレで現れた話、工員の頭をレンチで殴った話

Pⅵ

 

これある人物の話なのですが、誰の話かわかりますか?もちろんある経営者の話です。

 

こんな人物が優れた業績を残す人物になり得るなんて想像できますか?

普通、こんな人は何やっても上手く行かないと思われても不思議ではありません。

 

 

ですが、彼は大変な業績を残しました。

 

上記エピソードの主人公は、本田宗一郎その人です。

 

彼はいくつもの間違った経営判断をいくつもしてきました。それでも成功できたのは、単に幸運に恵まれたからに他なりません。

 

 

そんな中で、優れた経営者とはどんな経営者のことを言うのでしょうか?

それは

優れた経営者は、語るべきストーリーを持っている。

P117

 

ということです。

 

つまり、人間的魅力であったり、商品開発までのヒストリーにその経営者の理念が含まれているかが経営者の優劣を決めるのです。

 

 

例えばアップル。

アップルと言えばスティーブ・ジョブズを思い出すでしょうが、意外なことに、アップルが過去最高の利益を上げたのはジョブズが解雇された後です。

しかし、その後、彼が再びアップルの元に戻り、アップルをまた成長させていくのです。

 

こういう波瀾万丈のジョブズの生き方に魅了されるので、僕たちはアップル製品を購入するのです。

商品の品質だけで言えば、アンドロイド製品にアップル製品は劣っているらしいですよ。

ジョブズが亡くなり、彼の影響力もなくなったこともあってか、スマホのシェアはもはやアンドロイド製品のほうが上回っています。

 

 

 

僕たちは「スター経営者はさぞかし素晴らしい経営戦略を持っているのだろう」と勘違いしてしまうが、実は彼らは単に運がよい人だった。これが経営に起きている赤裸々な真実です。

 

 

どうだったでしょうか?

今まで抱いていた「経営」のイメージがガラガラと音を立てて崩れ落ちたのではないでしょうか?

 

 

何を売るのかやどう売るのか、より、誰が売るのかが経営を成功させる大きな要因となっているのです。

編集後記経営には「これ」という戦略がない、ということをどのように解釈しますか?

人によっては「経営の成功失敗はしょせん運次第か」「危険だから手を出せないでおこう」と感じるでしょう。

僕もそう思います。

しかし、一方でチャンスだとも思います。
誰だって優れた経営をできる可能性があるということだからです。

今の時代、SNSで誰でも情報を気軽に発信することができます。「自分ってこんな人」ということを多くの人に知ってもらうことができるのです。
これは本書の理屈で言えば、経営を成功させる大きな要因に対して、誰でも力を注ぐことができるということを意味しています。

売る物は何でも良いのです。「自分」を売れば、自ずとその人が売る物は売れるのです。自分さえ確立できれば、誰にでも等しく本田宗一郎になるチャンスが与えられているのです。

経営者になるためのノート

 

経営者とは、成果を上げる人のこと。成果とは、約束したことを実現すること。

これは、経営だけではなく、人生哲学にも繋がります

 

タイトルを見て「経営者の本か。自分には関係ない」と思った方も多いかと思います。

しかし、以前僕は本書を「カウンセリングの本として読めるから読んでみて」と人にお勧めしたことがあります。

 

改めて読み返してみて、その時の感覚は正しかったと再認識しました。

 

 

著者は言わずと知れた、柳井 正さん。あの株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長です。

UNIQLOの創設者と言った方がなじみがあるかもしれませんね。

 

ファーストリテイリングは2014年8月期決算で、1兆3829億円の売上高を達成し、世界4位のアパレル小売会社にまで成長しました(2018年8月の決算では世界3位!)。世界中で同じ品質の服が安く買えるというのはものすごくすごいことです。

 

柳井さんは、後継者の育成に力を入れているようで、本書もその一環として著されたみたいです。

彼が経営者として大切にしていることをまとめ、それをもとに連想を広げていく作りとなっています。

 

本書序章ではこんなことが書かれています。

自分たちがやると約束する成果を考えるにあたって、一番大切なことは、社会における自分たちの存在意義、つまり使命を考えることです。

P10–11

 

そして、こんなことも書かれています。

この使命感にゴールはありません。永久にゴールに到達することはないのですが、ゴールを目指して追いかけます。それが正しい会社の姿です。それが正しい経営者の行動です。

P11

 

ゴールは永久に到達することはないけれど、そこに少しでも近づくために具体的な行動を選択し、自分で「やる」と約束したその行動をとっていく。

 

僕はここを読んで「カウンセリングにも同じことが言えるな」と思ったのです。

特に、アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)で言われていることとまったく同じです。

 

この感想は、本書を読み切るまでずっと変わりませんでした。

 

ちなみに、もしACTを学んだことがない方がいたら、こちらをやってみてください。

本書との共通点にきっと気づかれると思います。

 

 

経営者になるためには、4つの力が必要です。 それが以下です。

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もっとも重要なのは、やはり、「理想を追求する力」です。

どういう商売がしたいのか、どういう自分でありたいのか、という方向性を定めなければどこにも進めません。

海に行きたいのに山に行く格好をする、というような間違いを冒してしまいます。

 

他の3つは「理想を追求する」ための手段になります。

どれが欠けても商売はうまくいかないようです。

 

そのため本書では上記1つひとつの要素を7つの視点から詳説しています。

 

 

この4つを見て、どう思いましたか?

「カウンセリングの本としても読めると言うから、ここまで読んでやったのに、『儲ける力』や『チームを作る力』はカウンセリングに関係ないじゃないか。商売に関係するのはわかるが、これらも含めてカウンセリングを語るのは無理がある」

と思われたかも知れませんね。

 

しかし、ちょっと待ってください。

二つの観点から考えてみると、やはり「カウンセリングにも通じる」と思ってくれるのではないかと思います。

 

先ず一つ目。

こちらは単純な理屈ですが、「カウンセリングもサービスの一つであり、商売だ」という視点です。

個人開業をしている人は特にそうです。法人格を取得して事業を展開しているにせよしていないにせよ、開業しているということはもう立派な経営者なのです。

だとしたら、「儲ける力」は不可欠です。

 

儲けることは職業倫理的にも重要なことだと僕は思うのです。

 

「チームを作る力」もそうです。

カウンセリングは基本的にクライエントと一対一で関わりますので、「チーム」と言われてもあまりピンと来ないかも知れません。

個人開業をしている方は、他に従業員がいらっしゃらないので、そういう意味でも「チーム」という感覚を普段もたれないかも知れません。

 

しかし、カウンセリングはクライエントとの恊働作業であり、まさに「チーム」なのです。

そのチームをひっぱっていくのは他ならぬカウンセラーです。まさに「非指示的リード」はその延長線上にあるものです。

 

本書には

メンバーを鼓舞する前にリーダー自身が先頭にたって挑戦をすることが重要です。

P135 

とあります。

CBTなどは、自分がまずそこで使われる技法を自分に使ってみることが推奨されていますし、精神分析でもまずは教育分析を受けるでしょう。

リーダーであるカウンセラーが、まず挑戦をすることが重要なのです。

 

 

そして二つ目。

「経営者として会社を大きくする志と、カウンセラーとしてスキルを向上させていく志はとてもよく似ている」という視点です。

カウンセラーとしての自己成長と「儲ける力」は一見関係がないように思えます。

自分で自分にCBTを実施したって、教育分析を受けたからって「儲ける力」はつきません。

 

「チームを作る力」も同様です。カウンセラーとして成長したからといって「チームを作る力」が養われるかといえば、そんなことはないかも知れません。カウンセリングは往々にして個人の営みだからです。

 

しかし、商売で「儲ける」は至上命題であるとはいえ、あくまでも「結果」なのです。

その結果を生み出すまでの道のりは、よりよいカウンセラーへの道のりとそう変わるものではありません。

 

例えば、本書の「儲ける力」の第一項は「お客様を喜ばせたいと腹の底から思う」です。

 

 

カウンセラーなら、誰しもが「クライエントに良くなってもらいたいと腹の底から」思っているのではないでしょうか。

 

誠実に他者とかかわり合うことの重要性は、商売にもカウンセラーとしての成長にも、何らかの「成果」を出すためには不可欠なのです。その「成果」が「儲け」なのか「クライエントの福祉」なのかの違いなだけです。

 

「チームを作る力」もまったく同様の理屈が通じると思います。

国籍とか人種とか性別とか年齢とかいう前に、もともと人間は個人個人が全部違っていて、誰ひとり同じ人はいないのです。

だからグローバルでなくたって、一つ一つの職場には必ず多様性があるわけで、本来の意味でのこの多様性を理解して、積極的に肯定して、チームを運営しない限り、どこでどのような組織を受け持とうが、成果なんてでないのです。

P129

 と本書にはありますが、多様性を受け容れて肯定する姿勢は、自己成長そのものですし、カウンセラーが目指すべき姿勢です。カウンセラーであれば、あらゆるものに目を開いていきたいものです。

 

いきなり経営学の本を読むと、心理学とは異なりすぎてたじろいでしまうかもしれません。

しかし、自分の得意なことに引きつけながら他分野の勉強ができると、とても興味深く感じることと思います。

その意味で、生の経営学(それも、世界3位のアパレルメーカーの経営学)を心理職の方が学ぶ上で本書はまさにうってつけだと僕は考えています。

編集後記僕はどこかで「会社はトップである代表の実力以上には成長しない。仮に短期的に成功することがあっても、それは単なる偶然である」と言うような言葉を聞いたことがあります。本書を読むと「そうなんだろうな」とますます深く思い知らされます。
会社を成長させていくことと、自分自身を成長させていくことはとても多くの共通点があるのです。

本書は、すでに開業して経営している人にはダイレクトに参考になると思います。まだ開業していない人にも、僕たちが普段実践している心理臨床行為と会社経営に共通項が多いことを知るきっかけになるかと思います。
僕は、むしろ後者の人(まだ開業していない人)に本書を読んでもらいたいと思っています。経営とカウンセラーとしての自己成長との共通点に気づく人が増えたら、僕たちの業界のあり方も変わるかもしれないと期待(妄想?)しているからです。