アメリカの高校生が読んでいる資産運用の教科書
資産運用のことだけではなく、経済動向や自分が志すものがある時の道しるべについて知りたいときにも参考になります。
タイトルに「アメリカの高校生が読んでいる」とある通り、確かに高校生が読んでも理解しやすいだろうな、というくらいとても簡単に説明してくれています。
今まで簿記やバランスシート、経済の変動などにあまり関心がなかった人が読んでも分かりやすいです。
特に痛烈なのは、アンバランスシートへの警告です。
バランスシートは本来、「バランスシート」と呼ばれるくらいですから、資産と負債+純資産は同じになるようにバランスが取れていないとおかしいものです。
しかし、何も考えずに負債になる物を資産だと思い込んで買い続けたら、どんどんそのバランスが崩れてしまいます。これがアンバランスシートです。
その例が住宅です。住宅はバランスシート上では「資産」の分類されますが、
実際には購入した時点で中古住宅になり、購入価格よりも資産価値は下がります。
P34
この主張は、僕もこのブログでしてきたこととも合致しますね。
バランスシートをアンバランス化させないためには負債を買わないことです。
バランスシートをアンバランスにしないために出来るもう一つのことは、資産を形成することです。
ただ、資産を得るために闇雲に動いていたら、疲労や機会損失などの負債を抱えてしまうだけで、いっこうに豊かになっていけません。
そのため、考えられる中で出来うるだけの効率性を求める必要があります。最も合理的な選択肢を選んでいくのです。
もちろん、人はそれぞれ異なる価値観があるので、何が最も合理的になるのかに一つの答えがある訳ではありません。
このことは、人に選択の自由を与えると同時に、自分にとって何が価値あるものなのかを明確にしておかないと、すぐに迷子になってしまうことも意味します。
「自由」だけでは、どこに行ったらいいかが分からないので、すぐに道に迷うのです。
ですが、「こっち」と行き先が決まっていれば、道中は自由に行きたいところに行きつつも、迷うことはありません。
経済学では、これをインセンティブというそうです。
なんだか、アクセプタンス・コミットメント・セラピーでいう「価値」と同じような考え方をするようですね。こうやって比較してみると、意外と心理のこととお金のことは近い関係にありそうな気すらしてきます。
資産を得る方向性や目的が明確になったら、実際にその道を進む中で得られるであろうゲインを最大化するための下準備をしておく必要があります。
ここでいう下準備とは、スキルを得ることです。
例えば、野球で食べていくという方向性を定めたとしても、上手でなければ一生趣味どまりです。
しかし、一生懸命練習して結果を残すことが出来れば多額の年俸でプロ球団と契約できるかも知れません。
もちろん、練習したからといって必ずしもプロになれるとは限りません。しかし、練習しないと絶対にプロにはなりません。
練習することは、プロになるということに向けた投資なのです。
面白いですね。
本書のタイトルは「資産運用の教科書」です。なのに、まずはこういった自分自身への投資について書いているのですから。
スキルが身につけば、可処分所得が増える可能性がグッと高まります。
可処分所得とは、収入から保険料負担などを差し引いたものです。自由に使えるお金だと思ってください。
この可処分所得、いくら自由に使えるといっても本当に全部を自由に使ってはいけません。
ここからいくらかは貯蓄に回す必要があります。貯蓄は利息を生むので消費してしまうよりも価値が高いと評価できるからです。
アメリカには
「貯蓄は今日の消費を犠牲にするほどの価値がある」
P74
という言葉があるそうです。
貯蓄をして自由に使えるお金が増えたら、ようやく投資に回すことができます。
貯蓄をより効率よくするには、家計簿を付けるなり、固定費を抑えるなりしなければなりません。この辺りの話は、僕が経済的資産を「守る」のところでお話していたこととも繋がりますね。
投資にお金を回すといっても、これも適当にやってはいけません。
自分への投資をするときにスキルを身につけたのと同様、お金を投資するときもお金についてスキルを身につけなければなりません。経済動向に詳しくなる必要があるのです。
お金がどういう仕組みで世の中を回っているのか、インフレとは何なのか、などがそうです。これらについても本書はわかりやすく解説してくれています。
借金についてもわかりやすく解説してくれています。
一般に「借金はよくない」と思われがちですが、よい借金もあるのです。
それはどんな借金でしょうか?
ここまでのところを読んでくださったらだいたいの予想はつくと思いますが、どうでしょうか?
もし、よい借金がどんなものかわからなければ、是非本書を読んでみてください。
もちろん、本書のタイトルは「資産運用の教科書」ですから、資産運用の話も出てきます。
株式市場の話や、債券投資の話、国債と株式の関係(景気が良くなると利益が上がることが期待できる分だけ株式の方が人気になり、国債の人気は相対的に落ち込みます)などがわかりやすく書かれています。
必見は投資の3つのルールです。
1、早くはじめること(Start early)
2、投資したお金はそのままにすること(Keep your money invested)
3、多角化・分散化すること(Diversify)
P197
このルールはお金のことだけじゃなく、色んなことに応用が出来そうです。
何かをチャレンジする時、「今が一番若い」と捉え、年齢を言い訳にせずにはじめ、じっくりと腰を据え、どん欲に色んなことを吸収していきたいものです。
なぜなら、両者はともに「生きること」に不可欠なことだからです。
どう生きていきたいかは、自分の心によってしか決めることは出来ません。そして、どう生きていてもお金が必要です。
限られた時間の中でよりよく生きたいなら、どうしても効率よくお金を増やし、負担を減らすことを考えざるを得ません。time is moneyとはよく言ったものだなと思います。