心理職でもできる資産形成と運用

心理職でもできる資産形成と運用

FP×心理Thによる資産にまつわるアレコレのお話

お金は寝かせて増やしなさい

 

長期的な視点で見た時、世界はどんどん良くなってきています。その成長を信じつづける行為がインデックス投資です

 

 

 おそらく、投資をしている人は少ないと思います。本書によれば、2015年時点で日本人の8.7%しか活用していないみたいです(米国は43%)。

 

投資にまつわる「怖い」というイメージがそうさせているのかも知れません。

 

 株価の上り下がりに一喜一憂し、上がれば大金持ち、下がれば借金取りから逃げる生活…。投資はギャンブルそのものなんだというイメージです。

 

確かに、このイメージ通りに投資を行うこともできます。

FXとか、高配当株を一点集中で買うとか。

 

けれど、こういったものは「投機」と呼ばれ、投資とは区別されることもあるくらい一部のことなのです。

 

本書は数ある投資手法の中でも、インデックス投資に的を絞って解説をしています。

インデックス投資とは、

世界中に分散したインデックスファンドを積み立て投資して長期保有すること

P014

 です。

 

インデックスファンドや積み立て投資というのが分からない方は是非本書をお読みいただいて勉強してもらいたいのですが、インデックス投資というものを簡単に言うと、このようになります。

 

「みんなで集めたお金を使って、株や債券を買い、株や債券が値上がりしたら、その値上がり分が自分の利益になる」

 

というものです。

 

これは収入が比較的少なくても、投資のプロではなくても出来る手法なのです。

 なんといっても、

基本的には、世界中の株や債券に分散したインデックスファンドを、毎月定期的に同じ金額を積み立てて、あとは寝かせておくだけ。

P016

 なのですから。

 

しかも、

たった100円からでも始められるのです。

P032

 

ネオモバなどがそうですね。 

 

なんだか怪しいことのように思えますか?

しかし、最近よく聞くようになったつみたてNISAは基本的にこういう仕組みで実施していくものなんです。

つみたてNISAは国がバックアップしている投資制度ですから、何も怪しいものではありません。

 

 

本書の価値は、著者が実際にインデックス投資を長年実施してきたという実績があることです。

というのも、インデックス投資は長期保有することが原則なのですが、日本でまともにインデックス投資を出来るようになったのはここ10年くらいのことで、著者のように日本でインデックス投資を長期に行った人が少ないからです。

 

今は、つみたてNISAに代表されるように、非常にインデックス投資を実施しやすい下地が整ってきています。

ですから、今がインデックス投資を始める絶好のチャンスなのです。

 

 

とはいえ、本書はインデックス投資“だけ”を勧めている本ではありません。

インデックス投資だけを勧めていないからこそ、僕はこの本をインデックス投資に興味がある方に強くオススメしたいのです。

 

というのも、この本では、投資を始める“前”に①家計の状況を把握することと、②生活防衛資金を貯めることを勧めているのです。

 

①の家計の把握は一万円単位の大ざっぱなもので結構でしょう。いくら入っていくら出ているのかをしっかりと把握するのです。もしここがマイナスになっているようなら、投資している場合ではありません。

 

②次に生活防衛資金を蓄える必要があります。生活防衛資金とは

リストラ、長期入院、災害などなにが起きても、自分と家族の生活をしっかり守るためのお金です。

P058

目安は生活費の2年分だそうです。この額を銀行預金等で確保するのです。

投資で得られるお金は「将来のお金」、生活防衛資金は「今のお金」と考えると両方を用意するのが大切なのが分かりやすいのではないか、と思います。

 

「今必要なものが今ある」の安心感は絶大ですよね。

投資にはどうしてもリスクが伴い不安を感じやすいですが、その不安を生活防衛資金の安心感で相殺するのです。

 

 

実際にインデックス投資をしようと思ったら、自分のリスク許容度と相談しつつ、どの資産クラス(株式、債券、不動産など、資産の種類のこと)にどの程度の割合投資して分散させるかを考えることが非常に重要となってきます。

そうすることがリスクの分散にもなるからです。

 

例えば、A社の株を100%保有していた場合、A社が倒産したらその株も紙切れとなりますが、A社に加えてB社の債券も保有していたら、B社の債券は紙切れにはなりません。

 

こうやって、異なる資産クラスに配分して投資資金を運用することをアセット・アロケーションといいます。

本書はこれを考えるためのツールもいくつか紹介してくれています。

その一つがこちらです。

長期投資予想/アセットアロケーション分析 ~ 投資信託のガイド|ファンドの海

 

このようなツールを使って、おおよそのイメージがつかめたら、後は本書に載っている商品を参考にしてインデックスファンドを購入していくだけです。

 

ちなみに、アセット・アロケーションポートフォリオの違いが分からないと言う方はこちらをご参照ください

【図でわかる】アセットアロケーションとポートフォリオの違いってなに? - 上機嫌な貧乏父さんを目指して | 投資と趣味の雑記帳

 

 

ここまできちんとリスク管理し、計画を立てたとしても、結局は投資です。

未来のことは誰にも分からない以上、思いがけず株価が下がっていく可能性は常にあります。

そうなると、「長期に投資する」という原則のもとで始めたインデックス投資であっても、持ち続けることを躊躇してしまい、不安になるものです。「多少損するけど、もっと大きな損をする前に売ってしまおう…!」と思うこともあるでしょう。

人間の心理として当然だと思います、誰だって損はしたくないし、人は得よりも損に敏感ですのでなおさらです。 

 

ですが、そんな時こそしっかりと「長期に投資する」ということを思い出さなければなりません。

むしろ、株価が下がってくれた方が、安く仕込めて(取得価格を下げられて)うれしいと感じる

P170

 からです。

例えば、毎月1万円を積み立てている場合、5000円の株価のものは二つしか買えませんが、これが2000円に下がれば五つ買えます。

この五つの株がまた株価を上げてくれれば、二つしか持っていなかった時と比べてより多くの利益を受けられるのです。

 

ですから、株価が下がって売りたくなった時こそ、知識の出番です。

本書では以下の図書に書かれていることを思い出すことを提唱しています。

これらは僕は未読だったので、今後読んでいきたいと思います。

上記した本の「どんな言葉を思い出したら良いか」は、本書で確かめてくださいね。

 

 

本書の特徴の一つは、出口戦略についても記載があることです。

出口戦略とは、資産の取り崩し方です。意外と出口戦略について記載のある投資本は少ないのです。

 

なお、インデックス投資をする方の多くはつみたてNISAを利用すると思いますが、本書はつみたてNISAについて特化した本ではありませんので、NISAの非課税運用期間後(つみたてNISAの場合は20年後)のことはとりだてては書かれていませんので注意してください。

 

とはいえ、NISAは非課税運用期間が決まっているだけで、「この期間が終わったら強制解約」というものではありませんので、本書の出口戦略は参考になると思います。

 

なお、つみたてNISAの出口戦略について分かりやすいマネタスさんの記事を見つけましたので、リンクを貼っておきます。

積立NISAの20年後はどうしたらいいの?疑問にFPが答えます!! | マネタス【manetasu】

 

編集後記投資が日本に浸透しない理由として「怖いというイメージがあるからでは?」と先述しました。
もしかしたら、それ以外にも「騙されるのではないか?」というイメージもあるのかもしれません。
正直、そのリスクは投資には常につきまといます。銀行だって証券会社だってそのリスク対象としては無関係ではありません。
僕たちの利益よりも自社の利益を優先するのは当然だからです。仮に向こうに騙すつもりも悪意もなかったとしても、僕たちからすれば「騙された」と感じることも起きうるでしょう。

しかし、それはこちらが理論武装をすれば防げることです。
臨床心理士公認心理師として働きたいなら資格を取るために勉強しなければなりません。得たいものがあるときには、犠牲が伴うのです。
投資も一緒です。お金を増やしたいと思うなら、やはり勉強するという犠牲を払う必要があります。
どんなものも、勝手に向こうからやってくることはないのです。

本書は誰が読んでも大変わかりやすく、勉強のはじめの一歩としては最適なのではないかと思います。