心理職でもできる資産形成と運用

心理職でもできる資産形成と運用

FP×心理Thによる資産にまつわるアレコレのお話

「幸せをお金で買う」5つの授業

お金はその多寡によって幸福を左右しません。お金をどう使うかに幸福は左右されるのです。 

 

タイトルが結構反感を買いそうですが。。。

ちゃんとした大学の先生が書いている本です。しかも、ブリティッシュコロンビア大学の心理学准教授(本書執筆当時)であるエリザベス・ダン氏によって書かれています。

 

心理学を研究している方がお金のことを書いてくれるのは、心理カウンセラーでありこうやってお金のブログを書いている僕としては、とても心強い味方を見つけたような感覚です。

 

 

一般に、給料が増えても、ある一定のところまで行くとそれ以降は幸福には影響しないということが知られています。

いわゆる、限界効用逓減の法則というやつです。年収が800万円を超える辺りから、年収の幸福に対する影響力はなくなっていくそうです。

 

そんな中、

 

「でもそれってホントなの?もっと別の、もっと賢いやり方でお金を使ったらどうなるの?」

 

という疑問からスタートし、研究結果をまとめたのが本書の位置づけです。

 

なんと、面白いことが研究の結果分かりました。

お金の使い方を変えると、その日全体の幸福感まで変わってしまうのです。

P013

 

ものを買うことから経験を買うことへ、自分のために使うことから他人のために使うことへ移行すると、幸福度に劇的なインパクトを与えることができるのです。

P015 

 と言うことが分かったのです。

 

多くの人はただ「稼ぐこと」や「自分の為に使うこと」を考えてしまいがちです。

欲しい物が欲しいだけ手に入ったら、確かにその時は幸福感に浸れるでしょう。

多くの人は、その幸福を目指しているのです。

 

しかし、このような幸福は極めて短期的なものなのです。

幸福が持続しないなら、次々に新しい幸福を手に入れようとしてしまうでしょうし、それって結局忙しいだけで全然幸福ではないですよね。

 

 

また、人はお金を稼ぐとどういうわけか孤独になろうとする傾向があることも分かったそうです。

でもこれって、自分で自分の首を絞めているようなものですよね?

 

一人の時間が大切なのは疑いがないことですが、それと孤独とは意味が異なります。

孤独で孤立する状態とは、独りぼっちだということです。人とのつながりがないということです。

しかし、人とのつながりは、長い目で見ると必ず資産になります。

その資産を自らなげうつのですから、自分で自分の首を絞めているようなものだと言うことなんです。

 ただお金を漫然と貯めるという行為をしていると、却って幸福から遠のいてしまうのです。

 

 

本書は、「ハッピーマネー方」として、幸福になるためのお金の使い方を5つのレクチャーにて解説してくれています。

 

1つ目のハッピーマネー方は「経験を買う」です。

このレクチャーでは家を購入しても全体的な幸福にはほとんど影響しないことが書かれています。

このブログでは、経済的資産の観点から賃貸vsマイホームを考え、賃貸に軍配を上げましたが、精神的な意味での勝負でもマイホームは「圧勝」という程でもないようです。

 

いよいよマイホーム購入に関しては真剣に考える必要がありそうですね…。

 

マイホームに限らず、物質的な物はそもそもそれほど幸福には寄与しないようです。

というのも

人間というのは順応性が高い生き物で、一度手に入れてしまうと、それが何であれすぐに飽きてしまう傾向があることが研究で示されています。

P027

ということだからです。

 

一方、旅行、コンサート、特別な食事という経験は物として手には入りませんが、幸福へ多大な寄与を及ぼしてくれます。

 

要は「レジャー」と呼ばれる活動にお金を使うことが、人々の幸福を高めてくれるのだそうです。

 

僕は普段、ほとんどお金を使いません。スマホなんて未だにiPhone5sで、買い換えようという気持ちも起きません。

今こうしてブログを書いているパソコンも、もらい物の旧式のMacです。

 

物にお金をかける気が元々あまりしないのです。

 

しかし、誰かと食事に行くときには、基本的に値段を気にせずに食べたい物を食べます。

映画が好きなので、結構頻繁に行きます。一人で行くこともしょっちゅうです。

 

それが楽しいから^^

 

 

タピオカミルクティを求めて行列を作っている女子高生達を見て「ようやるわ」と思うこともあります。

ですが、あれはタピオカミルクティそのものを求めてというよりも、友達とワイワイ同じ経験をする(わざわざ長時間ならんで同じ物を飲む。インスタにも写真をあげれる)ということにお金を払っているのだと考えると、非常によいお金の使い方だと思います。

500円程度でそれだけの経験を買えるのですから、素敵ですよね。

 

では、どんな経験を買うと最も幸福になれるのでしょうか?本書はその解答も用意してくれています。

・他の人々と交わることによって、社会的なつながりが生まれるような体験。

・この先何年にもわたって楽しい気持ちで繰り返し語ることができる思い出話につながる経験。

・あなたが感じている自分という人間、あるいはあなたがなりたいと思っている自分像に密接に結びつく経験。

・他の選択肢と簡単に比較することができないめったにないチャンスを与えてくれる経験。

P051ー052

 です。

こういった経験は、時間的な長さには関係がないとのことです。

ですから、一週間も旅行に行かなくても、日帰り旅行であっても十分に幸せになれるのです。

 

 

 

2つ目は「ご褒美にする」です。

いくら好きな物だからといっても、いつもいつもそれが手に入る状況にしておいてしまったら、いずれ慣れてしまいます。

慣れてしまうと、「好きな物を手に入れている」という喜びも同時に減退していきます。

そのため、好きな物こそ「ご褒美」にし、たまにしか得られない状況にしてしまうのです。

 

例えば、車好きな人は自分が買える範囲でのより高級な車を買おうとしがちです。なぜなら、高級車でドライブする方が、ずっと幸福感を感じられるからです。

 

しかし、どうしても人間はなれてしまう生き物。

高級車と言えど、毎日毎日同じ車でドライブしていても幸福感はどんどん得られなくなっていくのです。

 

ですので、本当に車が好きな人こそ、高級車をたまにレンタルして楽しむことが最も幸福なお金の使い方になるでしょう。

 

絶対そっちの方が安上がりですしね。

 

 

自分自身の生活を振り返っても、このことはよく理解できます。

 

僕の実家の近くには、そこそこ有名なお寺があり、観光客で賑わっています。

しかし、僕自身は…一度もそのお寺に行ったことがありません。

 

いつでも行けるところに、わざわざ入場料を払って行くだけの価値をどうしても見いだせないのです。

 

いつもいつも手に入るものは、幸福からは最も遠いものになるのですね。

 

希少性こそが価値を生み、それを手にするからこそ、幸せになれるのです。

滅多に手に入らないものは、滅多に手に入らないままにしておきましょう。

 

ちなみに。

カップルのマンネリへの対処法も書かれているので、興味のある方は本書を確認してみるといいかもしれませんよ。

 


 

3つ目は「時間を買う」です。

僕たちは隣町のスーパーの方がいつも行く近くのスーパーよりも安売りをしていると知ると、ついそちらまで足を運んでしまいます。

それが自転車で5分程度の距離ならまだよいのですが、時には自動車を使ってまで行くこともあります。

 

それによって、確かに安い商品は手に入るでしょう。

しかし、同時に失われているものがあります。

 

それは時間です。

 

僕たちは意外とこのことに気がつきません。

ですが、これはとても危険です。

 

隣町まで自動車で移動するのにかかったのと同じ時間を、他の自分がしたいことに使えれば、もしかしたらより幸福感を感じられたかもしれないのです。

車の移動に30分かかったとしたら、その30分で本を読んでリラックスしたり、たまった仕事が片付けられてストレス源をたつことが出来たかもしれません。

 

時間を使う「自分」という商品は、決してタダじゃないのです。

 

自分の時間単価を考える癖をつけると、

「近くのスーパーで買い物して余った時間をより有益なことに使うのと、隣町までわざわざ車で30分かけて少し安い食材を買うのと、どっちがお得だろう?」

ということが瞬時に分かるようになるかも知れません。

 

ルンバなどを利用するのも、掃除する時間を「買う」ことになり、結果的に幸福に繋がる安い買い物になるかもしれません。

 最初は「高いな」と思いますが、掃除する時間を他のことに当てられるのは何とも言えない快感がありますよ。

 

ところで、「時間を買う」というときに注意して欲しいことが二つあります。

一つが、それを単なる時短の為に使うと逆効果になる、と言う点です。

「あれもこれもしなければならない」から、あれとこれを短時間に済ませ、さらに「それ」を詰め込むために時間を買ってしまうと、時間の奴隷になってしまいます。

 

二つ目の注意は、「あえて時間がかかることをするのが好き」ならば、それを否定する必要がないということです。

自分で掃除するよりもルンバに任せた方が時間が空くのは事実ですが、掃除することが好きならその時間は大切な時間ですので、誰がどう言おうとルンバなんて買わない方が良いでしょう。

 

要は「時間を買う」目的が重要で、その目的が「自由な時間を作るため」であるときが一番価値のある買い物になるのです。

 

 

時間をお金と同価値の物と考えてしまうと、時間をお金を稼ぐ乗り物と見なしてしまいます。

ですが、自由な時間こそが幸福にとって重要であり、その時はお金のことは忘れるくらいがちょうどよいのです。

時間をもっとお金を稼ぐための乗り物であると見なすよろむしろ、もっと幸せな時間を過ごすこと自体を目的にすることを私たちは提案します。

P138

とのことですので。

 

 

 

本書よれば、何もお金をかけて時間を買うことだけが「時間を買う」というわけではなく、他人のために時間を使うことも「時間を買う」ということになるようです。

時間を人のために使うと、時間がたっぷりあるような気持ちになる

P115

とのことです。

 

口癖が「忙しい」の人は、他人のためにあえて時間と使ってみると、時間の感覚が変わってくるかもしれませんね。

 

また、通勤時間を短くするのも同じく「時間を買う」ということになります。

僕は以前通勤に片道2時間かけていましたが(色々事情があり…)、今はドアtoドアで30分程度のところに引っ越したので、非常に幸福度が上がりました。

 

 

 

4つ目は「先に支払って、あとで消費する」です。

これだけ聞くと何のことかよくわからないと思いますが、要は、未来に起こることにお金を使う、不確実性の高いものにお金を使う、ということです。

 

人は実際の楽しい出来事よりも、楽しそうな出来事を想像する方がより幸福感が高まるのです。

旅行に行くよりも、旅行の計画を立てている時の方が楽しい、みたいな心理ですね。

 

ですが、未来のことは誰にもわからないので、そこに賭けるのはちょっと勇気がいりますよね…。

誰だって、3ヶ月後にチョコレートがもらえるという状況と、今すぐもらえるという状況だったら、よっぽどのこと(ダイエット中とか、満腹状態とか)がない限り、今すぐ欲しいと思うことでしょう。

 

ただ、これは

「現在の威力」のせいで、人々は現在を過大に評価してしまい、先送りの潜在的恩恵を感じにくくなってしまうのです。

P158

 という理由からのことであり、本来は先送りをする方が幸福の恩恵を受けられるようです。

 

 

 

「先に支払って、あとで消費する」の正反対の行為を容易にしてしまうものがあります。

それが、クレジットカードです。電子決済なんかもそうかもしれません。

こういったものは、確かに消費行動を促進するでしょうから社会経済的には良いことなのでしょう。本書にも

クレジットカードは購入時の支払いの痛みをものすごく小さくするので、賢くて有能な人でさえ結果に対して無頓着になり、平気でお金を使ってしまうのです。

P164

とあります。

 

ただ、個人レベルのこととして考えると、「平気でお金を使ってしまう」のは危険ですよね。浪費ばかりしていては、本当にお金が必要な時に困ってしまいます。

そのため、今は僕は現金派で、ほとんどカードを使わないし、電子決済もしません。

使いすぎてしまうのが怖いからです。

 

しかし、ポイント還元などを考えると「うーん、電子決済もあり?か?」という感じになってきてはいますが。。。

 

とはいえ、現金派を貫くと「幸福」にはなれそうです。

 

どっちを取るか、今後よくよく考えていきたいと思います。時代は流れていますからね。

 

 

 

5つ目は「他人に投資する」です。

これはなかなか難しいですよね。頭で分かっていても実行に移すとなると躊躇してしまいそうです。

ただ、本書によると

お金の使い方のほうが、金額の大きさよりもはるかに重要でした。

P186

とのことであり、自分の余剰資金の中からできる範囲で行えば良いということみたいですから安心です。

 

とはいえ、この原則を知ったからといって「やらなきゃ」と思う必要はありません。

むしろ、義務感を感じるくらいならやらない方がマシなようです。

他人に投資するかどうかは、完全に自分自身の選択によって決める自由があります。その自由を犠牲にして「やらなきゃ」と思うと幸福が遠ざかっていってしまいます。

 

頑張った後輩がいたら「お疲れ」という素直な気持ちでいっぱいおごってあげるとか、そういう投資の仕方だとお互い幸福になれるかも知れませんね。

 

 

本書のまとめの章である「視野を広げよう」では、以上5つのハッピーマネー方を国レベルにまで押し上げ、国民を幸福にする政策案についてが記載されています。

「こんな国だったらいいなぁ」という政策ばかりです。

 

ただ、日本も実は国民を幸福にする政策を行っているようです。

その例が、超過累進課税制度です。

 

この制度、国内ではすこぶる評判が悪いですよね?

けれど、お金持ちからより多くの税金を取るという政策がある国と、そうではない国を比較すると、前者の方が国民の幸福度は高かったそうです。

 

まあ、税金の使われ方にもよるでしょうけどね。。

日本は今後、幸福な国になっていくのでしょうか?

 

編集後記本書でご紹介した5つのハッピーマネー方はいずれも説得力があり、納得できるものばかりだったかと思います。しかし、いざ実行に移すとなると…。僕自身も「他人に投資する」はなかなかハードルが高いように感じます。
しかし、まずはやってみること。これが大切です。早速先ほどコンビニに立ち寄った際、レジ横にある募金箱におつりを入れてきました。確かに今、少し幸せな気持ちになっています。

本書は、この記事でご紹介したハッピーマネー方以外にも、もっと具体的な例が示されています。
お金持ちですら必ずしもできていない贅沢なお金の使い方、知りたくはないですか?