いらない保険
保険は将来のリスクに対して備えるものですが、保険のほとんどが将来の変化に対応できていないため、保険自体がリスクになるという笑えない皮肉があります。
本書の「はじめに」からいきなり衝撃的な文面が目に入ります。
保険の商品設計に関わってきた専門家は、「老後の病気などには『健康保険』が一番と断言します。
P3
実は検討に値する保険は、数えるほどしかありません。
P3
などがそれです。
そもそもタイトルが「いらない保険」ですから、何かしら不利になる保険があるのだろうな、と予想は出来ますが、まさか、いる保険がそもそも「数えるほどしか」ないだなんてビックリですね。
ところが、このことは保険を少し勉強すれば実は分かることなのです。
僕もこのブログではずっと保険の不必要さについてお話してきました。
本書はさまざまな保険のリスクについて解説しています。
一つ目が、「契約書の中身が何年経っても変わらない」ということです。
終身医療保険に加入したとしても、実際に保障が必要になるのは30年後、40年後かもしれません。その間に医療そのものが大きく変わってしまうはずです。
P14
ましてや「人生100年時代」。長生きする可能性が今後もどんどん高まっていく中で、いつまでも旧式の保険を頼りにしていたら、いざという時に頼りになりません。
でも、保険って、「いざという時に頼りになる」ものであるべきですよね?
こう考えると、終身医療保険って、そもそもが概念崩壊しているのです。
なのに、どうして僕たちは保険に入ってしまうのでしょうか?著者曰く
今の保険の多くは、老いに対して我々が抱いている漠然とした不安心理に付け込んだものだと思います。しかも情報が保険会社からの一方通行に制限されているため、一般の消費者が合理的判断をしづらいようになっています。
P22
とのこと。
知らないことは、カモになるリスクがあるということを意味します。しっかりと勉強したいところです。保険は三大支出の一つなのですから、勉強するコスパは非常に高いです。
ガン保険についても記載があります。
ガン患者の数は増えていると言われています。「2人に1人がなる時代」とさえ言う人もいます。本書にも統計があり、
国立がん研究センターが公開している統計によれば、2001年における全国の新規がん患者は約56万人でした。それが2014年には約88万人です。わずか14年間で、実に1.6倍近い増加です。
P61
とのことで、この数字をみてどういう印象を受けましたでしょうか?
「ガン保険に入って対策しないと」と思われましたか?
しかし、よくよくデータを見ていくと、男性患者の77%、女性患者の66%は65歳以上の高齢者だったのです。
つまり、高齢化が進んでいることが、ガン患者の増加の理由だったのです。
ですから、不必要な不安にかられてガン保険に入る必要性は極めて低いのです。
こういうと、「いくら高齢になってからとはいえ、ガンになるリスクがあるのなら保険に入るべき」という考えを持つ方もおられるかも知れません。
しかし、(これは民間医療保険にも同じことが言えるのですが)医療技術は年々洗練されており、腹腔鏡や胸腔鏡手術で済み、入院数も減っています。
ですから、高い保険料を払い続けたとしても、数日の入院給付金しか保険会社から支給されないなんてこともざらなのです。
既に公的保険(国民健康保険や健康保険)に入っているのですから、それでカバーすれば済んでしまいます。
この辺りの話もこのブログでも取り上げているので、ご覧ください。
貯蓄・運用目的の保険がいらない理由も、統計データをもとに解説してくれています。
結局、高い手数料を取られるだけですし、何十年も元本割れするリスクがあるし、貯蓄にも運用にも向かないのです。
では、貯蓄や資産運用を目的とした場合、保険の代わりになるものは一体何なんでしょうか?
本書で挙げているのは、確定拠出年金やつみたてNISA、そして個人向け国債、じぶんの積立です。
前者二つはこのブログでも紹介していますので、ご覧ください。
国債の説明は割愛するとして、じぶんの積立とは明治安田生命の商品です。
こちらは
元本割れ期間がないので、生命保険料控除による税負担軽減効果だけを狙って加入する手がある
P135
ということで、本書には珍しく、民間保険のメリットを挙げているので信頼できそうです。
ただ、
同社(明治安田生命)にとって収益性が高い商品ではないだけに、顧客リストに載ったが最後、ほかの商品への加入も強く勧められる可能性が高いかも知れません。
P135
とのことですから、ほかの保険には強い意志で入らない覚悟が必要なようです。
ところで、加入に値する保険とはどのような保険なのでしょうか?
本書では、次の二つを挙げています。
重要だと思われるのは、現役世代(とくに世帯主)の死亡や長期の就業不能状態に備える保険くらいです。
P150
具体的な商品名も本書には記載されており、大変親切です。
具体名をここで挙げてもいいのですが、それをして本書が売れなくなり何か問題になったら困りますので、あえて書かないでおきます。申し訳ありません。
気になる方は是非本書を手に取ってお確かめください。
とまあ、このような感じで、本書はいらない保険について具体的なデータをもとに解説してくれているので非常に説得力があります。
しかも、ここにはあえて書きませんが、特定の保険会社(絶対皆さんも知ってる大きな保険会社です)の商品についても名指しで解説していますので、より具体的にどういう理由でどういう保険がいらないかイメージしやすいでしょう。
本書を読んでくだされば、このブログで書いてあることもあながち間違っていなかったと思ってくださるのではないでしょうか?
是非、本書をお読みいただき、当ブログも読んでくだされば幸いです。
そんな中、保険会社はCMなどを通してその不安に付け入ってきます。まさに「不安産業」といった様子です。
一方、本当は民間の保険なんかよりもずっと優秀な公的保険について僕たちはあまり知る機会がありません。ですから、どうしても不安になったときになじみのある保険会社へ連絡をしてしまうのです。
本書は、そんな知らないことから来る不安への処方箋です。
本書を通して、「今入っている保険はいらない保険だった」ことを知るのは大変な痛みを感じることでしょう。人は利益よりも損失の方に2〜3倍も強い反応を示すからです。
しかし、そのバイアスに引っかかって非合理な選択をし続ければ、損は膨らむばかりです。現状維持を望むか、本書のような良書を買って勉強するか。今まさに選択が迫られています。
本書購入にかかる必要資金は900円程度です。このコストで入った方がよい商品名・入らなくてもいい商品名が具体的に分かるのですから、充分元は取れると思います。