気がついた時がコミュニティ心理学を応用する時!
リヒト(@r2209)です。
3年次編入を果たし、ついにコミュニティ心理学を専門的に学べるようになりました。その後、そして今、僕がどうコミュニティ心理学とつきあっているのか、お話したいと思います。
前回までの簡単なあらすじ
大学院受験を一旦諦め、大学への3年次編入に進路をシフト。結果、無事コミュニティ心理学を学べるゼミがある大学への入学を果たしました。
大学では、弱点であった研究法をしっかりと学び、卒論ではコミュニティ感覚について研究しました。
同時に精神保健福祉士の勉強をしていたので、それとのシナジー効果によって社会に貢献するコミュニティ心理学の魅力にますます取り憑かれる事になりました。
さて、次はいよいよ大学院入試です…!
2回目の大学院受験…!!
卒論と平行して取り組まなければならない大切な行事。
僕にとってはこいつをクリアするために、わざわざ大学に入り直したと言っても過言ではない課題。
そう、大学院入試です。
もちろん、コミュニティ心理学を専門に学べる大学院が志望校です。もうクライエント中心療法を志す僕はこの頃にはいませんでした。
志望校は3つに絞りました。いずれもコミュニティ心理学の泰斗がいる大学院です。
とはいえ、そのうちの1つは直接的にコミュニティ心理学を扱っているわけではなく、その大切さを強調している立場の先生がいる大学院でした。
それは、皆様も一度は名前の聞いたことがある大学院。
東京大学大学院です!
結果はと言うと……!
合格です!
合格しました!信じられますか!?
中学生が使う英単語帳を使っていた僕が、東大の、それも大学院に合格したのです!!
…しかし、これは一次試験までの話。
そう。
そうなのです。やはり二次試験の面接では不合格となりました。
トラウマが蘇ります。。。
「人を見るプロに落とされる=人としてダメな奴仮説」が再浮上してきたからです。ヤバい…。とてもヤバい事態です。
今となれば、「どうして東大を受験したのですか?」と面接の際に聞かれた際の返答がまずかったのではないか?と自分を慰めることができます。
上記質問に対して「コミュニティ心理学がやりたいからです!」と答えちゃったのです。でも、先述のように、東大にコミュニティ心理学を専門にやっている先生はいませんでした。その大切さを強調している先生がいただけです。
それなのに「コミュニティ心理学がやりたいからです!」ですからね。。。
ま、それくらいコミュニティ心理学を真剣にやりたかったということですね。(笑)
しかし、当時はとてもそんな風には考えられませんでした。
3年次編入までして、再び院浪するようなことになったらと思うと気が気じゃありませんでした。
その後、無事合格
3年次編入までしてまた院浪したのでは洒落になりません。
ところが、なんとか運良く僕を拾ってくれる大学院があり、そこで2年間お世話になる事ができました。
ほんとラッキーでした…
大学の時はコミュニティ心理学を学ぶので精一杯でしたが、大学院になるとコミュニティ心理学を“実践”できるようになりました。
大学院という場所は、実習でカウンセリング経験のようなものをしなければならないところなのですが、僕はその一環として「引きこもり児童の支援」のためにメンタルフレンドという活動を行うことができました。
メンタルフレンドでは引きこもりを続けている児童の家で話をしたり、遊びをしたりするために、本人の自宅まで通っていました。
これって、以前の記事でも紹介したアウトリーチそのものですね。
悩んでるのは何も相談に来る人ばかりじゃないんです。
自分がなりたかった自分になれているような気がして、ちょっぴり誇らしかったです。
特に嬉しかったのが、この子は10年近く引きこもり生活を続けていたんですが、なんとか僕と二人で映画に出かけることが出来るようになったことです。
映画館と言っても、彼の家から近いところにあった映画館です。だから、言わば普通に出来ることではあるんです。
でも、彼の中では何かがこの経験を通じて変わったんです。
こうやって映画館という社会的資源を活用していくことにより、社会との結びつきを強めていくことも、大切なコミュニティ心理学的発想なのです。
修論ももちろんコミュニティ心理学で
学部生が卒業論文を書かなければならないのと同じように、大学院生は修士論文を書かなければなりません。
修士論文のテーマですが、やっぱりコミュニティ心理学関係のテーマを選びました。
今回はコミュニティ感覚ではなく、コンサルテーションを選びました。
コンサルテーションというのは、間接的な援助の一つです。
例を挙げた方が分かりやすいと思うので、例を挙げて説明します。
例えば、いじめがクラスで発生し、それが問題となっている教室を担当している先生がいたとします。
この時、その学校の先生に心理学の立場から色々と話を聞いたり助言をすることによって、学校の先生が自らの力でいじめ問題に対応できるようにお手伝いをします。
このようなお手伝いをコンサルテーションといいます。
なぜ、コンサルテーションではこんなまどろっこしいやり方をするのでしょうか。つまり、どうしてカウンセラーが直接いじめ問題に首を突っ込まないのでしょうか。
それは、生徒といつも一緒にいられるのは学校の先生であって、何かあった時にすぐに対応が出来るのはカウンセラーではなく学校の先生だからです。
コンサルテーションでも、いじめが起きた時その問題を解決することはもちろん重視します。
しかし、それ以上にいじめをきっかけに学校の先生の対応力を強化し、次にいじめが起こったとしても学校の先生だけで対応できるようにしていくことをより大事にするのです。
こうすれば、学校の先生がいじめが重篤化する前にすぐに対応できるし、ひいてはいじめが生じにくい環境へとクラスが変わっていきます。
これをコミュニティ心理学では「予防」といいます。
これも僕が最初にお話ししたコミュニティ心理学の定義にも登場します。
コミュニティ心理学とは、人と人との結びつき力・つながり力・かかわり力を強めていくことを目指す心理学である。
その力の強さを示す指標は「コミュニティ感覚」と呼ばれる。コミュニティ感覚が強ければ、当然隣の人のことがよく分かるし、その人の不調にも敏感になる。
これが結果的に「予防」につながる。
修論の結果は?
僕は自分の資格を活かし(精神保健福祉士を取った)、修士論文では心理職と福祉職がどういう風にコンサルテーションをすればよりよいコンサルテーションになるのかを研究しました。
その結果、やはり「予防」が大切だということが分かりました。
特に、2つの予防が重要であることが分かりました。
1つ目が、問題が発生するのを防ぐという意味での予防です。これは先ほどご説明した予防に該当するものです。要は教科書的な定義に収まる予防です。
そして2つ目は、福祉職員がバーンアウトすることを防ぐという意味での予防です。
福祉職員の方は四六時中患者と接しているので疲れてしまっているんです。
だから、コンサルテーションを通じて、福祉職員のその大変な思いをケアしていく必要があるのです。
もしかしたら、「コンサルテーションは問題解決のためのものであり、コンサルティの心理的問題は扱わない」という風に勉強した方もいらっしゃるかも知れません。確かに、教科書にはそう書いてあります。
しかし、実際には心理的ケアも行うことが大切なことが分かったのです。
この観点の「予防」は、僕の研究オリジナルの知見だと考えています。
心理職が福祉職と普段からコンタクトを取っておくことの重要性も明らかとなりました。
この点も教科書でコミュニティ心理学を勉強している人にとっては意外かもしれません。
なぜなら、教科書的に言うとコンサルテーションはビジネステイクな関係で成り立つもので、問題が発生したまさにその時、まさに必要という時にしか両者が会わないみたいなことが書いてあるからです。
現場は必ずも教科書的に進められるわけではない、ということが分かりとても興味深かったです。
コミュニティ心理学は現場に根差した心理学ですから教科書で学んだことだけを実践していれば良いというわけではないのです。このあたりのところが難しいところではありますが、面白いところでもあります。
今の僕とコミュニティ心理学との付き合い
今現在、僕は医療領域で心理カウンセラーをしています。
特に専門としてやっているのは認知行動療法(CBT)です。
これを聞いて、皆さんどう思われました?
「コミュニティ心理学、関係ないじゃん」
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
確かに、CBTでやることは相談に来たその人自身の認知に焦点を当てることです(非常に単純化して言えば)。だから、そういった意味ではコミュニティ心理学は関係ないように思えます。
しかし、こう考えるとCBTとコミュニティ心理学は矛盾するものではないんです。
つまり、人が何かを考えるとき、それは必ず環境からの刺激があるのだ、という視点から考えるのです。
その環境には当然、仕事、恋愛、勉強など様々ですが、突き詰めればどれも対人関係やコミュニティに関する問題なんです。
だから僕はCBTをやる際、必ずこの関係をチェックします。つまり「人と環境との相互作用」です。
人は一人では生きられません。必ず誰かと相互作用して生きているのです。
「人と環境との相互作用」に注目しながら、その人が普段何をしているときに楽しいと感じるのか、不快と感じるのかをメモしてきてもらいます。
そして、そのメモを見ながら楽しいと思える活動を増やしていくことを支持し、不快な出来事はその理由を一緒に考えながら改善点を見出していく作業を行います。
これが今僕のしているコミュニティ心理学の実践です。
もう1つ、専門に取り組んでいることがあります。それは対人関係療法(IPT)です。
IPTも個人療法なので、基本的に面接室でお会いするのはクライエントお一人です。
しかし、場合によってはそのクライエントの「重要な他者」ともお会いし、その方にクライエントのことをお話ししたり、クライエントと重要な他者との関係性を取り持つこともあります。
これはまさに、コンサルテーションの在り方そのものです。
やっぱりIPTも今の僕がしているコミュニティ心理学の実践そのものなのです。
最後に
何度目だ?って話ですが、最後にまた僕が最初に示したコミュニティ心理学の定義を見てみたいと思います。
コミュニティ心理学とは、人と人との結びつき力・つながり力・かかわり力を強めていくことを目指す心理学である。
その力の強さを示す指標は「コミュニティ感覚」と呼ばれる。コミュニティ感覚が強ければ、当然隣の人のことがよく分かるし、その人の不調にも敏感になる。
これが結果的に「予防」につながる。
どうでしょうか?
3つの記事に分けてコミュニティ心理学についてお話しましたが、なんとなくイメージをつかむことは出来ましたでしょうか?
そして、こんな風にコミュニティ心理学を定義することで、誰でもコミュニティ心理学を使えそうな気になっていただけたでしょうか?
僕はコミュニティ心理学はいつでも使える心理学だと思っているのです。
こんなに普段使い出来る心理学は他にないかもしれません。どんどん使っていってもらい、コミュニティ心理学仲間が増えたら嬉しく思っています。
少しでも興味を持ってくださり、本格的に学びたいと思ってくださる方がいたら、その方にはこちらを強くお勧めします。
僕とコミュニティ心理学との出会いについては以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!