相手は変えられない ならば 自分が変わればいい
本当の恋愛は、幻想を脱してから始まります。そのあまりにも生々しい現実に絶望するかも知れませんが、長続きをさせるためには、現実を受け入れることがむしろ近道なのです。
せっかくお付き合いできても、すぐに関係が終わってしまう。
そんなことありませんか?そして、自分には魅力がないんだと悩んだりもしませんか?
僕もそうでした。
せっかく好きな人とお付き合いできたのだから、どうせなら長く一緒にいたいものですよね。
そのための方法をいくつか具体的なエクササイズとともに紹介してくれているのが本書です。
やることは、自分が行動できることだけに集中すること。これだけです。
行動を起こす前提として、恋愛の幻想をまずはぶっ壊す必要があります。
表紙をめくってすぐに目に飛び込むのが「理想のパートナーなど存在しないことを理解する」ですから、とても衝撃的な本になっています。
本書はACTの考えた方を恋愛関係へ応用した意欲的な内容です。
ACTは「想像的絶望」という概念がある通り、なかなかにドライかつ現実的な発想を持っています。
ほとんどの人が、真の、愛に満ちた、意味ある関係は、ハネムーンの段階が終わって初めて育つということを理解していない(中略)麻薬をやっているようなもので、麻薬が効いているうちはパートナーが素晴らしく見える。だが、あなたが見ているのは真実ではない。それは麻薬によって作られた幻想だ。
P22
と恋愛へのキラキラしたイメージをバッサリと一刀両断しています。西野カナのラブソングには絶対出てこないフレーズですね…
しかし、多くの恋愛は強い幻想を抱きすぎ、それが「裏切られた」と感じるからうまくいかなくなるのです。
実は何にも裏切られたなんてことはなく、単に現実が見えただけなのです。
その現実をも受け入れることが本当の愛なのに、幻想の方を真実かのように錯覚するから傷つくのです。
だったら初めから幻想など抱かず、完璧を求めず、自分は正しく相手が間違っているという非現実的な考えを信じず、違いを許容することに力を注ぐ方が恋愛関係を維持しやすいでしょう。
その一つが、愛を「行動」としてとらえることです。なんともACTらしいですね。
愛を「感情」だと考えれば必ず終わりが来ます。
頭からつま先まで愛に浸っている期間は
平均して半年から一年半で、三年続くのは珍しい。
P21
のです。
しかし、行動には終わりがありません。
自分がどんな関係を相手と築きたいかという、自分の価値に立ち戻り、そのための行動を選択していくことができるのです。
自分の正しさを証明するのが価値なのか、それとも愛に基づく行動を取るのが価値なのか。
愛に基づく行動を取る際、必ずしも恋愛感情はなくてもいいのです。
愛の行動が愛の感情を呼び起こしてくれるからです。逆ではありません。行動が先です。
もちろん、愛の感情に基づく愛の行動は尊いものです。それがあるに越したことはありません。しかし、感情は人間にはコントロールできないのです。
愛の感情は恋愛の当初にあるボーナスか、はたまた偶然による産物であるととらえる方がより現実に即しています。
以上のことを頭で理解しているだけでは不十分です。なぜなら、
テニスの本を読んでもテニスプレーヤーになれないのと同じことだ。まず実際にボールを打たなければならない。人間関係も同じだ。
P13
というわけだからです。
その点、本書には沢山のエクササイズが載っていますのでボールを打つ練習がしやすくなっています。
人間は感情的な動物ですから、練習しないと容易に感情に支配されてしまいます。
ACTでは感情に対して無意識に反応してしまうことを「反応」モード、あるいは自動運転モードと呼ぶようです。
このモードからの脱却が、ACTの中心的な目標の一つなのです。
このモードに陥ると
相手に対して柔軟な対応ができず、心が告げる物語に従って衝動的な行動をしてしまう
P33
結果となり、問題が起きたり後悔したりすることにつながります。
心が提案する解決策は、必ずしも最も良い方法とは限らないのです。
心の提案に対して盲目的に従わないでいられるためには、自分の中で「価値」を明確にすることです。
価値を明確にすることができれば、心の提案や感情に従うことがその価値に沿った結果をもたらすかの判断が容易になります。
価値を明確にすることは大変に困難ですが、本書ではそのためのエクササイズも用意されています。
とはいえ、価値を明確にし、それに沿った行動を取ったからといって全てのことが変わる訳ではありません。
最も変わらない対象、それが相手です。
そんな変わらない相手を受け入れていくことも、愛には大切な要素なのです。
自分が傷ついているとき、つい自分の傷を見ることで精一杯になります。
しかし、自分が傷ついているとき、相手も同じだけ傷ついているのです。
そのことを考えると、少し、相手のことを受け入れやすくなるかも知れません。
変わらない相手を変えようと努力することほどむなしいことはありません。
そんなむなしいコントロール戦略にエネルギーを注ぐのは不経済ですから辞めてしまいましょう。
その分のエネルギーを、自分が理想のパートナーになるために使う方がエネルギーのよい投資になります。
難しいですが、これも練習あるのみです。
この練習のためのエクササイズも、本書には用意されています。
上記した「価値を明確化する」「受容する」の2つの練習を「しない」という選択をした場合、それは必然的に「今のままで良い」ということを選択したことを意味することに注意して下さい。
「今のままで良い」という選択をした以上、もう不満を言うことはできません。だって、あなたが選んだ現状なのですから。自分で選んでそれに不満を言うのは何ともおかしな話ですもんね。
このように、ACTはとっても厳しい発想を持ちます。
しかし、現実は常に厳しいのです。
本書の姉妹本に
がありますが、タイトルの何と辛辣なこと。
幸せがどこかにあると思うから不幸になるのです。とても厳しいですよね。
でも、この厳しさを前提に考える方が、前に進みやすくなるのです。
本書は、小手先のテクニック論をまとめた本ではありません。
恋愛における「態度」を指南したものです。ですから、あらゆる事柄にも応用が効くことでしょう。
本書を読むことで、ACTの技術が身につくだけでなく、今までうまくいかなかった恋愛やその他の対人関係の質を向上させられるかもしれなくなるので、一冊で二つの味を楽しめます。
おそらく、たくさん理由があると思いますが、今はっきりと言えることは「相手に甘えていた」「現実を見ていなかった」ということです。
心のどこかで「付き合っているのなら、これくらいしてくれるのは当たり前」「自分の気持ちは伝わっているはず」というような思い上がりがありました。
こうやって書き出してみると「それじゃ上手くいかないよ」ということがよく分かるのですが、「自動運転モード」になると、気づけないものです。
僕が最近心がけていることは、例え付き合っていたとしても「いつでも片思いのつもりで」です。
そうすると「相手に好かれるにはどうしたらいいか?」「相手が嫌がることをしたくない」と良い意味で自分の行動に焦点が当てられるようになり、相手の行動に焦点を当てずに済むようなった気がします。変えることが出来るのは、本当、自分の行動だけなのです。
この心がけをしていると、思いがけない幸運に巡り会えることがあります。
片思いをしている時って、相手から話しかけてもらえるだけでも嬉しいですよね?そんな感じで、例え付き合っていても「いつでも片思いのつもりで」でいると、思いがけず相手から愛情表現をもらえたとき、とっても嬉しくなるのです。オススメですよ。(笑)