心理職でもできる資産形成と運用

心理職でもできる資産形成と運用

FP×心理Thによる資産にまつわるアレコレのお話

対人関係療法で改善する夫婦・パートナー関係

 

夫婦・パートナー関係は、ストレスの元となると同時に、ストレスを解消してくれる力にもなります

 

このどちらになるかはかなり流動的なものではありますが、後者の「力」へ変えていくことは可能です。その方法について、具体的な事例を元に知ることができるのが本書です。

 

 

タイトルの通り、本書は対人関係療法の考え方がベースとなっています。

対人関係療法は病気の治療法であり、本書もうつ病を抱える夫婦の事例などが登場します。

 

しかし、そのエッセンスは病気を持っていない夫婦・パートナー関係でも応用することは十分可能です。本書タイトルが「〜で改善する」となっているのはそのためです。

 

対人関係療法では、以下のように前提することで、夫婦・パートナー関係のひずみを改善可能なものであると捉えます。

対人関係療法では、相手への不満を、「期待していることが満たされていない」と見ますので、何を期待していて、それがどういうふうに満たされていないのか、そもそも期待していることは相手の現実に合った妥当なものなのか、その期待は相手にきちんと伝わっているのか、といったところを見ていきます。

P012

 

ただ「こうするべき」と相手に期待していても、それが相手に伝わっていなければ一生実現しないかも知れません。仮に伝わっていたとしても、相手にはできないことであるのかもしれません。

いずれの場合も、「なんでやってくれないの?」と不満を抱えることとなり、この不満が蓄積すると、関係性に亀裂がはいります。ことによると、それが病気にまで発展する怖れまであるのです。

 

ですから、期待を整理し、それを言葉にして伝えていくことがとても大切になるのです。

パートナーとの関係が良好になると症状が改善し、パートナーとの関係が険悪になると症状も悪化する、というような傾向はよく見られるものです。

P022

 

とはいえ、夫婦・パートナー関係は重要である一方で、その分扱いが難しい関係ではあります。

それは、同じものを共有する関係でありながら、依然として違いが多くある存在だからです。育った環境も違うし、(異性愛なら)身体的特徴も違うし、好きな物も違うでしょう。

共有する時間は以外と少なかったりします(日中はお互い別のところで仕事をしていたり)。

 

こういう差異が多くあるにも関わらず、恋愛期間中はお互いに「合わせよう」とするので、この差異に気づきにくくなってしまいます。次第にお互いの境界線も見えにくくなってきます。

 

差異があるのに差異がないように勘違いし、それと平行して夫婦という「運命共同体」になっていくのです。

 

しかし、時間の経過と共にこの差異が明らかとなると(というか、もともとあった差異にようやく目が向けられるようになると、と表現する方が正確かもしれません)、「境界線が見えにくくなっている」ことが関係に大きな影を落とす危険性に繋がります。

この危険性をよく言い表しているところを引用します。

通常の人間関係では「失礼なこと」として位置づけられる「責める」という行為が、どうしてパートナーとの間では日常化してしまうのか、ということを考えてみると、(中略)運命共同体意識と言えるものですが、「人格を持つ一人の他人を責めている」という意識があまり持てず、自分の一部を叱咤激励しているような気持ちになってしまう

P037

 

これこそ、自分と相手との間に境界線が上手く引けなくなったことの現れです。本当は他人なのに、あたかも自分自身かのように錯覚するのです。

 

パートナーというのは、元々違う二人なのにも関わらず運命共同体とならねばならない。

相当難易度の高い営みであることが分かりますね。意識してズレを埋めていく努力が求められます。

パートナーという距離の近さのために、ついつい相手のことを知っているような気になってしまうところからさまざまな決めつけや行き詰まりが始まってしまいます。
相手のことを自分は本当に知っているわけではない、ということを常に意識し、「なぜ相手はこういうことをする(言う)のだろうか」ということを、決めつけずに相手に聞いてみるとう姿勢が案外重要なのです。

P053

 

パートナーだからこそ、「相手のことを自分は本当には知っているわけではない」と意識することが重要です。相手をこうだと決めつけず、相手を尊重することが却って自らの精神衛生に寄与するのです。 

 

編集後記ここでいう「改善」とは、関係を終わらせることも含みます。別れることで自分の人生の質が上がるのであれば、それは十分に「改善」でしょう。
対人関係、特に夫婦・パートナー関係は難易度の高い関係です。それだけに、「その関係を通して、どうなりたいのか」という目的をしっかり持つことが大切です。

関係を改善するのには努力を要します。
しかし、それに充分見合うだけの力をくれるのも夫婦・パートナー関係です。

ストレスの元凶にするか、それとも力にするか。それはあなたの選択次第です。どちらを選ぶための努力をしますか?